秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
ゲーム好きなので、ゲームが登場する映画を探していくうちに、たまたま見つけたんです。実在するチェス選手ジョシュ・ウェイツキンの父親が書いた本が原作で、ジョシュが7歳でチェスと出会い、向き合っていく様子を描いています。僕の中で100点の作品です。
主人公のジョシュが、とにかく優しい。小さな妹がチェスのコマを持って、「これは?」と聞くシーンがあります。どれだけチェスが強くても傲慢(ごうまん)にならずに、1ミリも知らない人の立場に立って教えてあげられるのがジョシュ。すごいなと思います。対戦相手にも優しいし。「ジョシュみたいになれたらいいな」って大人にも思わせてくれる。大人から子どもへ与えるのではなく、その逆があると念押しされている気がします。
映画はジョシュの子供時代の一部分だけを切り取っているから、結構スパッと終わるんです。「あれもある、これもある」ではなく、話が簡潔なのがうれしい。大事なことがしっかり詰まっているように感じられます。
僕にとってゲームは、山とか川で遊ぶ感覚に近い。能動的に参加できるのが楽しいし、選択肢が自分にあることが大きいですね。この映画は「勝ち負けがある競争でも、ヘルシーに楽しみながら参加することができる」と気付かせてくれました。仕事や受験でも、競争をやめるのではなく、競争自体を健全で楽しく豊かなものにすることが大事なんだろうと。目指す先を、「勝つ」からもうちょっと広げて「豊かな競争」みたいに考えるといいのかな。
(聞き手・伊東哉子)
監督・脚本=スティーブン・ザイリアン
原 作=フレッド・ウェイツキン
製作国=米国 出 演=マックス・ポメランク、ジョー・マンテーニャほか かやま・てつ
ドイツ・ベルリン在住。代表作に「ベルリンうわの空」(イースト・プレス)。現在は、「レタイトナイト」を「路草」にて連載中。 |