「アフター・ヤン」(2021年) 「テクノ」と呼ばれる人型ロボットのヤン、中国系の養女・ミカ、養父母が暮らす近未来が舞台です。
パリにある老舗キャバレー「クレイジーホース」が舞台のドキュメンタリーです。ヌードショーの様子はもちろん、その裏側を見ることができて面白いです。よく、「エロさではなく芸術作品として素晴らしい」と評価される舞台なのですが、その通りだと思います。衣装や照明に至るまで、全ての人がものすごい熱量でひとつのステージに携わる。ダンサーたちにとっても、クレイジーホースの舞台に立つということは、憧れやステータスのひとつなんだと思います。
ダンサーたちの美しいボディーラインも魅力ですよね。オーディションの場面では、審査員がお尻の美しさなど、プロフェッショナルに注視する様子も映されます。厳しく選抜された人たちが集まるからこそ、一体感のあるステージが完成します。女性の美しさや優雅で官能的なクレイジーホースの世界観は、憧れそのものです。
私はもともと、バーレスクで活躍するダンサーのディタ・フォン・ティースやきらびやかなショーが好きでした。普段「妄想世界」をテーマにイラストを描いていますが、世界観や配色では、自分が見てきた「好きなもの」が表れていると思います。
4年前、実際にパリにショーを見にいきました。シックでクールな雰囲気の外装で、ほの暗い室内には、赤色のライトが輝いていました。映画のサブタイトルに「夜の宝石たち」とありますが、イラストでは夜空でキラキラと輝く星のように、暗闇の中でダンサーたちの体が浮かび上がる様子を表現しました。
(聞き手・田中沙織)
監督・編集=フレデリック・ワイズマン
撮影=ジョン・デイビー
製作=米・仏 シェリーリリー 長崎県出身。
恋人たちのロマンチックな日々を描いた「妄想日記」をSNSで更新中。著作に「星降る夜のロマンチック妄想録」(河出書房新社)。 |