秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
ニコラス・ケイジが好きなんです。声が特に。公開当時、アートを学んでいた米国で見ました。
ニコラス演じる主人公デイビッドはお天気キャスター。著名な作家の父親に劣等感を抱き、妻や子どもとも別居中で、予報が外れたと度々見知らぬ人からファストフードや飲み物を投げつけられます。印象的だったのは、別居前、妻に頼まれたタルタルソースを買わずに帰ってきて、夫婦げんかになったシーン。ずっとタルタルって唱えてたのに忘れる?!っていう笑いと、あの時タルタルソースさえ買ってたら家族と一緒にいられたかもという思いと。それで留学当時、よく目にしたタルタルソースのパッケージをパロディーで描きました。女の子はデイビッドの娘? 言われてみたらそうかも。じゃあそういうことで(笑)。
「人は残したファストフードを捨てるより投げる方を選ぶ」というせりふがあります。大切にしないものの象徴として描かれる残したファストフードや、登場人物のしぐさ、せりふの意味を深く考えてみると、答えのない哲学みたい。父親にみえを張ったり、思い描いた通りにいかない人生に葛藤したりするデイビッドの人間くささもいいんですよね。人の矛盾や心の隙間は胸に響きます。
あまりせりふは多くないけど空気感で伝えるような作り方は、BGMのようで居心地がいいです。こっちに判断を委ねるというか、押しつけがましくないというか。日常を描きつつ、どこか奇妙なシュールレアリスム的な世界観も好きです。日常の中にこそ不思議な世界があると思うから。
(聞き手・山田愛)
監督=ゴア・バービンスキー
脚本=スティーブ・コンラッド
制作=米 出演=ニコラス・ケイジ、マイケル・ケインほか まつだ・ゆうき
1987年東京都生まれ。雑誌「GINZA」でイラスト連載中。4月からTOKYO MX「5時に夢中!」の水曜コメンテーター。父は故・松田優作さん。 |