秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
封切りされてすぐ、妻と娘と一緒に見に行きました。パンフレット、今も大事にしています。映画の後、昼ご飯をデパートで食べた時、僕と妻はそこでジーンと涙ぐんじゃってね。
もともとは漫画家志望でした。小学校5年の時、吉祥寺の本屋で石ノ森章太郎さんの「マンガ家入門」を見つけて読んだのがきっかけです。トキワ荘の話を知ったのは漫画雑誌「COM」に連載されていたのを読んだ高校生くらいの時でした。
映画は実話を基にしたフィクションです。主人公は野球漫画などで知られる寺田ヒロオさん。学童社の「漫画少年」という伝説の雑誌が縁で寺田さんや石ノ森さん、赤塚不二夫さん、藤子不二雄さんら若手漫画家たちが次々とトキワ荘に集まって共同生活が始まり、時代の流れの中で葛藤する彼らの姿が描かれます。
寺田さんと石ノ森さんらが漫画論を戦わせるシーンが印象的です。寺田さんは漫画の教育的な意味合いを大切にする生真面目さがある。一方、石ノ森さんは突出した個性で才気あふれた人。新旧の世代のぶつかり合いを感じますね。
このイラストの人物は寺田さんだけど、寺田さんじゃない。手塚治虫さんを尊敬してベレー帽をかぶっていた漫画家たちを重ねています。瞳の先には憧れの「漫画少年」。その雑誌の先行きには時代の変化で一抹の不安がありましたが、若者は掲載をめざして「やらなきゃ」と意志を固める。そんな彼らのために希望の一番星を最後に描き入れました。何度見ても、絵を描き始めた頃の気持ちにさせてくれる映画です。
(聞き手・小松麻美)
監督・共同脚本=市川準
出演=本木雅弘、鈴木卓爾、阿部サダヲ、さとうこうじほか
ひろせ・かつや
1955年生まれ。妖怪絵本シリーズ「妖怪横丁」「妖怪温泉」や、近著「ねこ おどる」など(いずれも絵本館)。 |