秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
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献金箱の40ドルを盗もうとして懲役刑を受けた未成年の水兵・メドウス。彼を下士官のバダスキーとマルホールが休暇気分で護送する数日間のロードムービーです。道中、何も知らない若造に「飲む、打つ、買う」の男の楽しみを教えてやろうと馬鹿騒ぎ。男同士ってこうなんだ、と男性は父親だけの女系家族で育った私は驚きました。でも、3人のやりとりが面白くて繰り返し見た映画です。
主演のジャック・ニコルソンは他作品と比べると抑えめの演技ですが、粗野なところと繊細さが共存するバダスキーはハマリ役。手癖は悪いけど純粋な子どもそのもののメドウス、軍人生活を棒に振りたくない真面目な黒人のマルホールも脚本を俳優の個性に合わせて書いたかのようにぴったりです。セーラーハットを扱う手つき、タクシーの止め方、女性の口説き方など細かいエピソードや表情を重ねて人間味ある個性を見せてくれる。
とくに、スケートリンクのシーンが好きです。バダスキーたちは大柄で滑るのが下手くそなメドウスを「ペンギンの親分みてえだ」と言って笑う。まるで子どもを見守る両親みたいに見えてくるんです。ぎこちなかった3人の関係が旅の中で変わっていくのも面白いですね。
バダスキーとマルホールはこの後も飲み友達くらいにはなりそう。彼ら水兵たち、「飛べないかもめ」の人生は続くんですよね。私も「今もどこかで生活してそうだ」と読者に思ってもらえる人物を描いていきたいです。
聞き手・井上優子
監督=ハル・アシュビー
製作=米
出演=ジャック・ニコルソン、ランディ・クエイド、オーティス・ヤングほか かもい・まさね
代表作に「雲の上のキスケさん」など。ブラシ屋で働く女性が主人公の「にれこスケッチ」を月刊フィール・ヤングで隔月連載中。 |