秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
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牧師だった父が寅さんファンでね。幼い頃、毎年正月になると、映画館へ連れられて見たものです。
香具師(やし)を生業(なりわい)とするフーテンの寅さんが、ふらりと故郷の東京・葛飾柴又に戻ってきては毎回大騒動が起こる人情劇シリーズ。39作目のこの作品を挙げたのは、寅さんの他人に対するスタンスがよく描かれていて勉強になるからです。
ある日、病死した香具師仲間「般若の政」の息子・秀吉が寅さんを訪ねて柴又にやってくる。政は酒乱のダメ男だったので、奥さんは蒸発してしまっていた。事情を知った寅さんは、秀吉を連れて母親探しの旅に出る。彼は他人の問題にまるで自分のことのように付き合うんだ。
心に残ったのは後半、大学受験で悩む甥(おい)の満男が「人間は何のために生きてんのかな?」と問う場面。寅さんは「生まれてきてよかったなって思うことが何べんかあるじゃない。そのために人間生きてんじゃねえのか」と真摯(しんし)に答える。
立派な勤め先、財産、家庭。どれも寅さんにとっては縁遠い。だけど彼は人の悲しみがわかり、他人を思いやれる人。それだけでみんなから好かれるんだ。
自分以外の誰かを大切にしていると、人生は必ずうまくいく。僕は絵本作家になって7年間、評価されなかった。だけど2歳の息子のために描いた70作目で売れたんだ。作品に愛が入り、読者に伝わったんだと思う。寅さんのように「人に求めず自分が与えること」。大事なことじゃないかな。
聞き手・曽根牧子
監督・原作・共同脚本=山田洋次
音楽=山本直純
出演=渥美清、倍賞千恵子、秋吉久美子、五月みどり、吉岡秀隆ほか 1978年生まれ。暴走族から絵本作家になった経歴を持つ。新刊「ママがおばけになっちゃった!」(講談社)は20万部を突破。
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