秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
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ウェス・アンダーソン監督の映画が好きで、公開されてすぐ映画館に見に行きました。細部に至るまで綿密に作り込まれたコマ撮りのアニメーションに、のっけから衝撃を受けました。
盗みで生計を立てていた父キツネのミスターフォックスは、妻と約束して泥棒稼業から足を洗い、親子3匹で地味な穴暮らしを始めます。でも野生動物としての性(さが)やプライドを抑えられず、見えを張って大きな木の家に引っ越し、近くの農場から鶏やガチョウを盗む。そこから3人の農場主との面白おかしい闘いが始まります。農場主たちは悪い人間として描かれているけど、それは追われる側のキツネから見た姿。キツネも野生動物として純粋に獲物を捕っているだけで、この世界に悪はないんです。
僕は北海道東部の本別町生まれ、帯広市育ちで、野生のキタキツネは割と身近にいました。高校か大学の時、バイト中にキツネに弁当を持って行かれたことがある。「あ、やられた」と思ったけど、それはキツネの生きるための行動。そんなに嫌な気持ちにはならなかったな。
野生本能と家庭との間で葛藤するお父さん、愛にあふれたお母さん、ひねくれた表現をする子ギツネのアッシュ。僕にも2歳の息子がいて、家族のありように共通する部分がある。性格は全然違うけど、アッシュが息子に見えてきていとおしい。子供ができてから久しぶりに見て、改めて自分は父になったんだなと感じました。
聞き手・安達麻里子
監督=ウェス・アンダーソン
製作=米・英
声の出演=ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープほか 1975年生まれ。近著に「みんな」(WAVE出版)など。11月、新作絵本「ゆき」(ほるぷ出版)を刊行。12月、東京都杉並区の「URESICA」で個展。
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