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私の描くグッとムービー

コシノヒロコさん(デザイナー)
「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」(2011年)

家族か祖国か、使命を貫く強さ

  コシノヒロコさん(デザイナー)「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」(2011年)

 

 アウンサンスーチーさんの、ミャンマーでの民主化運動を描いた物語です。国内各地の少数民族の村を遊説してまわる場面をイラストにしました。演説の時に必ず髪に花を飾るんです。どんな大変な時にも女性を忘れないというのはすてきですよね。

  コシノヒロコさん(デザイナー)「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」(2011年)

 

 もう1枚は映画を見たあとで何げなく描いた油彩の抽象画。血のような赤に仕上がって映画に重なる気がしています。民衆が弾圧を受けながらも自由を求めて手を伸ばすイメージでしょうか。

 軍事政権によって15年も自宅に軟禁されたスーチーさん。その間イギリスに暮らす夫や息子たちとは会えない日々でした。夫は彼女がノーベル平和賞を受賞できるよう奔走しますが、受賞後も彼にはミャンマーへの入国ビザが下りなくて。本当に胸が痛みました。

 映画に登場する人たちはスーチーさん以外ほとんど男性で、彼女の孤独が際だっていました。そんな中、兵士たちに取り囲まれた家で一人ピアノを弾くシーンはとても印象的。男性には思いもよらない行動ではないかしら。武力ではなく言葉で平和を訴え続ける彼女の闘い方は、女性特有の解決策なのかもしれません。

 家族か祖国か――、どちらも愛する人たちです。私が彼女の立場だったらどのような決断をするだろうと考えさせられました。つくづく感じたのは、男女に関わらず大きな目的や使命感を持った人間はやはり強いということですね。

聞き手・渡辺鮎美

 

  監督=リュック・ベッソン
   製作=仏
   出演=ミシェル・ヨー、デビッド・シューリスほか
 1937年生まれ。近年は絵画制作にも取り組む。9月25日~10月25日、東京・銀座のKHギャラリー銀座で陶芸家・大樋年雄との2人展「宇宙・土・器」。
(2015年9月25日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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