「五感で楽しめる」県立美術館 2015年4月24日(金)、「日本一のおんせん県」を名乗る九州・大分に大分県立美術館(OPAM)が開館します。長崎県美術館(2005年)、青森県立美術館(2006年)以来、9年ぶりに新設される県立美術館です。
「鶴舞う形の~」と聞いて即座に「群馬県」!と答えられた方、きっと幼少の頃を群馬県で過ごされた、もしくは現在でも生活されている人ですね。群馬県には「上毛かるた」という郷土かるたが存在します。上毛かるたは、群馬が生んだ偉人や名品、歴史を紹介すべく1974年に作られた郷土かるたの草分け的存在です。長野県で育った者なら、全員が「信濃の国」を歌えるのと同じように、群馬県民でこのかるたのことを知らない人はいないほどメジャーなものです。
現代作家の山口晃さんの画業を振り返る、群馬県立館林美術館で開催中の「山口晃展 画業ほぼ総覧-お絵かきから現在まで」(2014年1月13日まで)でも、この上毛かるたを用いた新作が出ています。山口晃さん(1969~)は3歳から高校卒業まで群馬県桐生市で過ごしました。毎年冬になると子ども会主催で上毛かるた大会が催されます(何と驚くべきことに県大会まで開催されています)。群馬県で子ども時代を過ごすと、いやが上にも上毛かるたをそらんじられるようになるシステムが構築されているのです。
山口さんはこれまでも「さて、大山崎 ~山口晃展」(京都)、「東海道 新風景」(静岡)、「山口晃展 東京旅ノ介」(東京)といった展覧会ごとにその場所に合わせた新作を描いてきました。今回地元群馬県での初めての展覧会開催とあり、どんなモチーフで挑むのか楽しみでしたが、群馬県民の心をわしづかみにする上毛かるたを選んだとはさすがです。ところが、そう簡単な作品になっていないのが山口さんらしい点です。「誰しもが知る『上毛かるた』」のまさに間隙を突くような作品を考えてきたのです。
かるたの読み札と取り札(絵札)のように私たちは物事に対し、決まりきった固定観念を知らず知らずのうちに植え付け、それに基づいて行動しています。そんな「常識」に疑問を呈するような山口晃さんの新作。画家、小見辰男氏が描いた上毛かるたの絵札に新たな解釈を与えている上州っ子必見の新作です。
■「山口晃展 画業ほぼ総覧-お絵かきから現在まで」
群馬県立館林美術館
http://www.gmat.pref.gunma.jp/
■山口晃(所属するミヅマアートギャラリーのサイト)
http://mizuma-art.co.jp/artist/0250/
群馬県には上毛かるたの他にも名物がたくさんあります。山口晃著『すゞしろ日記』(羽鳥書店)にも登場した群馬のソウルフード「焼きまんじゅう」や清月堂の「旅がらす」(前橋)。見た目もびっくりの「桐生うどん」(ひもかわうどん)。展覧会会場のある館林だけでも、「館林うどん」、「麦落雁(らくがん)」、「なまずの天ぷら」、「鯉こく」等々枚挙にいとまがありません。でも、群馬県一番の名物は“かかあ天下”かもしれませんね、山口さん。 |
群馬県立館林美術館
〒374-0076
群馬県館林市日向町2003
開館時間:午前9時30分から午後5時
※入館は午後4時30分まで
休館日:月曜日(祝休の場合は開館し翌日閉館)
12月29日~2014年1月3日休館
電話:(0276)72-8188(代表)
URL:http://www.gmat.pref.gunma.jp/
【筆者プロフィール】
中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/