「なごみの米屋」のぴーなっつ最中 地元・千葉の名産、落花生が練り込まれたあんが詰まっていて、食べると地元で過ごした時間を思い出します。
僕、よくリベラルな発言をしてますが、食事に関しては少し保守的なんですよ。執筆中はコンビニで売ってる2、3種類のチョコレート菓子ばかり食べますし。
冒険はしないのだけど、2、3年前に人からの紹介で知ってからは、入稿後とか特別な時にこのチーズケーキを食べてます。
食べた瞬間、人知を超えたおいしさに舌とか歯とかが幸福で喜ぶんですよ。グラハムクッキーのざくざくとした歯触りとマスカルポーネチーズのやわらかい食感、くどくなくスッととけていく後味のバランスが絶妙。甘すぎず、食べ終わると幸福が去っていくのもまた良し。追いかけたくなるんだけど、欲望のままに注文しないようにしてるんですよ。
基本的に人間って欲望を拡大させすぎると、かなわないことの苦痛を感じ始めるんですよね。僕は「風花のチーズケーキ」に対してそう思っていて。頻繁に食べ続けて、定番化しちゃうと先には絶望しかない。
最高峰を超えるようなおいしいものなんか、他にないんだもの。作家で言うと、ドストエフスキーとか川端康成とか、もうそういう最高の領域。だからあえて時々に抑えてるんです。そうやって上手に付き合っていかないと。
◆福島県二本松市大関438の7(☎0243・24・2965)。1カット600円。午前9時~午後5時半(ラストオーダーは30分前)。無休。オンラインショップで購入可(1ホール4号2千円、送料別)。
なかむら・ふみのり 1977年生まれ。小説家。2005年「土の中の子供」で芥川賞。近著に「カード師」(朝日新聞出版)。26日に各界著名人らと語り尽くすデビュー20周年記念の対談集「自由対談」(河出書房新社)が発売予定。