新浜レオンさん
「なごみの米屋」のぴーなっつ最中 地元・千葉の名産、落花生が練り込まれたあんが詰まっていて、食べると地元で過ごした時間を思い出します。
「なごみの米屋」のぴーなっつ最中 地元・千葉の名産、落花生が練り込まれたあんが詰まっていて、食べると地元で過ごした時間を思い出します。
埼玉県内の日光街道沿いには六つの宿場町があり、せんべいで有名な草加宿だけでなく、ここ杉戸宿を含め、宿場ごとにおせんべい屋があったものです。私の育った杉戸宿には、鶴牧煎餅店があります。
店裏手の工場からは、蒸した米に、さっと塗ったしょうゆがあぶられて香ばしい匂いが漂います。物心ついたころから傍らにありまして、半世紀以上食べてなお飽きない。変わらず皆さんの胃袋をつかんでいるんです。ソウルフードと言って過言ではないでしょう。
子どものころは2枚、3枚と食べたものですが、最近では体のことを考えて、間食もなるべく控えています。でも筆を休めて、お茶を頂きながらここのおせんべいをつまむ時はほっとします。これぞおせんべい、私にとってはね。
縁あってこちらのごひいきさんになった、フランツ・カフカやトーマス・マンの翻訳で有名なドイツ文学者の高橋義孝先生の色紙には「鶴牧煎餅ハ 関東平野の 土の匂ひがする」としたためられ、お店に掲げられています。この言葉をかみしめながら、ぜひご賞味あれ。
◆埼玉県杉戸町清地1の8の7(問い合わせは0480・32・1337)。
10枚入り750円(7月からは800円)。箱入りもあり。
午前8時~午後7時。
(月)休み。
地方発送も可。
きたむら・かおる 作家。
1989年、国語教師をしながら覆面作家として「空飛ぶ馬」でデビュー。2009年、「鷺と雪」で直木賞受賞。本紙夕刊連載小説「ひとがた流し」の文庫版を朝日新聞出版から9月に刊行予定。