森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
新潟港から高速船ジェットフォイルで約1時間。佐渡島の表玄関・両津港に着いた。初秋の日差しを浴びながら、幹線道路を30分ほど歩くと、汽水湖で日本百景の一つ、加茂湖が目の前に。湖畔にたたずむ古びた舟小屋の中には、きらめく湖面を背景に禅画の「円相」のような景色が広がっていた。梁からワイヤでつり下げられた直径2メートルの円。近づくと、古いロープの束だった。
作者は、米国在住の海洋科学者でアーティストのイーサン・エステスさん(30)。日本海を北上するクロマグロの研究のため、5~7月に水揚げが盛んな佐渡を訪れるようになった。今年制作した本作は、漁船の甲板にあるコイル状のロープから発想したという。廃棄されていたプラスチック製の釣り用ロープを使った。「円」の形には、プラスチックのリサイクルを願う気持ちも込めている。
サーフィンが趣味のエステスさん。波乗り後は、手に持てる範囲でゴミを拾って帰るという。サーフィン仲間の伊藤渉さん(37)は、「拾ったゴミがこんなアートに変わるんだな」と感心する。
展示場所は自然と人間、海と陸の境目だ。制作を依頼した「さどの島銀河芸術祭」の発起人でアートディレクターの吉田モリトさん(47)は、「人間と海の関わりを考えさせる彼の作品は、佐渡の自然にぴったりでした」と話す。
(牧野祥)
《アクセス》 佐渡・両津港から車で5分。
さどの島銀河芸術祭 2021年の「本祭」に向けて、16年から毎年期間を設けて「プレ祭」を開催。島内の複数箇所で作品の展示やイベントを行う。 |
島南部の赤泊で採れるカヤの実=写真手前。香ばしく歯応えがある。この実を使ったかりんとう=同奥=は、両津港ターミナル待合室の売店などで。砂糖味100g、塩味85gで、各400円前後。
岩首昇竜棚田は両津港から車で約1時間。標高30~470メートルの山間に460枚ほどの田が広がる。地元ガイドによる案内も(要予約。2人からで1人2300円)。問い合わせは佐渡観光交流機構(0259・27・5000)。