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アートリップ

究竟頂
杉本博司作(東京都港区)

表参道に現れた「古代神殿」

「ハナエ・モリビル」の跡地に建てられたオーク表参道のエントランスホール=池永牧子撮影
「ハナエ・モリビル」の跡地に建てられたオーク表参道のエントランスホール=池永牧子撮影

 最新ファッションに身を包んだ人々が行き交う東京・表参道。ビルの一角に天井からぶら下がる不思議なオブジェが現れた。

 2013年にオープンしたオーク表参道のエントランスホール。現代美術作家の杉本博司さん(71)が空間全体をデザインした「究竟頂」という作品だ。

 2階まで吹き抜けの天井から下がるステンレスのオブジェは、接着面直径1・8メートル、長さ5・5メートル。下に向かって細くなり、先端は直径5ミリ。想像の中の「線」はそのまますぼまりながら下降して、地球の裏側のブラジルを直径数マイクロメートルの太さで通過。やがて宇宙の「無限点」へ達するという。そもそも「究竟頂」とは京都・金閣寺の第三層を意味し、仏舎利を安置する場所だった。仏の教えが「空」に連なるように、本作も人々を無限の彼方に誘う。

 「もともとは床に設置する予定で工事が始まっていた。でもベビーカーが通りにくいという声を受けて、杉本さんが『逆さまにしよう』って」と設計に携わった大林組設計部の辻芳人さん(49)。安全の確認と設計変更に約2カ月かかった。

 石材にもこだわった。壁の玄昌石は、杉本さん自身が中国に行って調達。「古代神殿」のごとく天井がより高く見えるよう、石板の縦幅を上に行くほど短くした。

 買い物に来ていた笠原萌美さん(21)は見上げて思わずつぶやいた。「ここだけ空気が違う。吸い込まれそう」

(伊藤めぐみ)

 オーク表参道

 地下1~2階は商業施設、3~8階はオフィスが入る。外装は丹下憲孝と大林組が共同設計。照明家の豊久将三による外壁照明は時間によって色が変化。


ぶらり発見

アートリップ オーク表参道2階の茶洒金田中(問い合わせは03・6450・5116)では「三色の餡と白玉餅」(写真、1200円、餡の種類は季節により異なる)、「葛切り」(1200円)が人気。店内からは杉本さんがデザインした「石の庭園」が見える。

 歩いて20分の代々木公園では9月21、22日、チャイナフェスティバル2019を開催。飲食店や雑貨店など約100のブースが並ぶ。ステージでは中国の伝統芸能などを披露する。問い合わせは実行委(080・4679・0699)。

(2019年9月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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