森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
きらめく佐伯湾を、祭り船が波を立てて悠然と走る。大分県佐伯市の玄関口、佐伯インター近くにある消防署の壁画だ。七色の大漁旗が鮮やかにはためき、内陸のこの場所にも「潮風」を運ぶ。
縦13×横26メートルの壁画に描かれるのは、毎年9月にある八幡地区の祭りで豊漁を願い巡航する「ジョーヤラ船」。ジョーヤラは、「漁あれ」がなまったといわれている。船上で踊る中学生を指導する上杉和弘さん(64)は、「祭りに欠かせない目玉。満艦飾の船が行く様は、非常にいい光景です」。
壁画の作者は、八幡地区出身の美術家・佐倉康之さん(51)。市内の保育施設の壁画を始め、市民参加型のアート活動を行ってきた。昨年秋に県内で開催された国民文化祭の事業として、市が制作を依頼。制作期間の約1カ月間に、市民延べ約250人が参加した。壁にトレースした佐倉さんの下絵に、番号で分けた約140の色を指定通りに塗り、子どもたちが板に描いた海の生き物を切り抜いて「乗船」させた。暑さの厳しい晩夏の作業だったが、連日参加したという女性たちは「また市内にいい壁はない?」と笑い合う。
佐倉さんがこだわるのは「色彩鮮度」。「色が新鮮でないと感動が伝わらない」と話す。ペンキが退色する数年後には、作品を描き変える計画だという。今年は14日に、ジョーヤラ船が出航する。
(中村さやか)
ジョーヤラ船 佐伯市・大宮八幡神社の大祭「五丁の市」(14、15日)の祭り船。14日午前11時、笹良目港を出発。2艘が並走して佐伯湾を1時間半ほど巡航する。 |
佐伯市の郷土食の代表が、万能調味料のごまだし。焼いたエソなどの魚の身に、ゴマやしょうゆほかを加えてペースト状にしたもので、うどんの汁に使うのが一般的=写真。市内の土産店などで購入できる。
造船業が盛んな同市。船の進水式があると、日程などが市観光協会ホームページで公開され、一般も見学可能。旅客船や貨物船が、水しぶきをあげて海に入る壮大な光景が見られる。