森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
多摩センター駅から遊園地へ向かうれんが道を歩いていくと、原色の色鮮やかなモニュメントに出くわした。口を開け、四方八方を向く多頭の蛇。よく見ると、とぼけた表情が愛嬌たっぷり。通信教育大手ベネッセコーポレーション東京本部ビルの前に置かれる「蛇の樹」だ。1992年に仏出身の造形作家ニキ・ド・サンファル(1930~2002)が制作した。
精神病治療のために創作を始めたニキの作品は、自由で開放的、生命力があると評される。その作風に会社の未来を重ねた福武総一郎社長(当時)が、ユニークな企画を生む創造力を育んでほしいと、ニキを含む現代美術作品17点を敷地内に設置した。
現代アートは美術館の外でこそ魅力が発揮されるという福武氏。作品を間近で見られるように柵は置いていない。他方で、月に一度のメンテナンスに加え、週に一度の目視点検も欠かさない。清掃の手順は、美術専門家の助言に沿い、細やかに決められている。
社員の明日佳織さん(34)は、作品と戯れる子どもや記念撮影する人々を見る度に顔がほころぶという。「角度や天気によって蛇の顔が違って見えるんです。朝は元気。夜は穏やかな顔」。見る人や時刻、気分によって、表情を変える多頭の蛇は、今日も街の息づかいを映しとっている。
(山田 愛)
ニキ・ド・サンファル 女性や蛇などをモチーフに油彩画や版画、立体などを制作。代表作にたくましい女性を表現した「ナナ」シリーズなど。 《アクセス》 多摩センター駅から徒歩5分。 |
ベネッセコーポレーション東京本部ビル21階には、プラネタリウム、ベネッセスタードームがある。同社のキャラクターしまじろうをテーマにした番組などを、各回ごとに上映している。土、日、祝、休および学休日のみ営業。400円。小中学生200円。
同ビルから徒歩3分の「パルテノン多摩」5階にあるレストラン、ベジフルキッチン トレーノ・ノッテ(問い合わせは042・373・7323)では、多摩で自然栽培した野菜などを使ったサラダビュッフェが1058円で味わえる=写真。