森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
強い春風が吹く名古屋市・栄地区のビル街。通り抜けた先に緑豊かな白川公園がある。中央広場の足元には不思議な陶板作品が広がっていた。
作者は、旧ソ連(現ウクライナ)出身の現代美術家イリヤ・カバコフさん(1933~)。社会主義体制下で挿絵画家として活動した。本作では16人の少年が下方をのぞき込んでいる。シンプルな構図だが、テーマは難解だ。「『彼ら』は井戸のような空間をのぞいているから中央は暗いはずなのに、空のような真っ白な明るさが広がっている」とカバコフさん。「下を見ながら空を見るとはいかに?」と見る者に問いかけている。
98年から翌年にかけて、公園内の彫刻設置プロジェクトの一環で制作された。広場の既設タイル内に陶板を水平に埋め込んだ。作品を選定する検討委員を務めた世田谷美術館館長の酒井忠康さん(77)は、「少年たちは互いを見ず、会話もしていない。けれども同じ方向を見つめている、『沈黙』でつながる同胞のように感じます」と本作を見る。
作品の近くでは、名古屋大2年の浅野匠海さん(20)らがよさこい踊りの練習に励んでいた。「パラドックスがテーマなら、実は頭上の自分たちがのぞき込まれているのかも。踊りに気合が入ります」と笑った。強風に負けじと、「同胞」の他大学生たちと一心不乱に舞っていた。
(星 亜里紗)
白川公園 約9ヘクタールの敷地内に広場や噴水、名古屋市美術館、同市科学館がある。「緑のなかで親しむアート」をテーマとした、国内外の5作家の彫刻作品などを設置。 《アクセス》 伏見駅から徒歩約10分。 |
白川公園内の名古屋市科学館(問い合わせは052・201・4486)にはプラネタリウムがある。10日(水)~5月9日(木)、宇宙がテーマの「スペース・ツアーズ」を投影。800円(展示室の観覧を含む)。
同公園から徒歩約10分のスパゲッティ・ハウスヨコイ住吉本店(問い合わせは052・241・5571)では、名古屋めしの一つ、あんかけスパゲティの元祖「ミラカン」(写真、950円)を提供。こしょうが利いたスパイシーな味わいだ。