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アートリップ

「項(Relatum)」 
李禹煥(リウファン)作(東京都江東区)

石と対話、自然に触れる

石は李が河原で拾ってきた=相場郁朗撮影
石は李が河原で拾ってきた=相場郁朗撮影
石は李が河原で拾ってきた=相場郁朗撮影 近くには米のクレス・オルデンバーグと妻ブリュッゲン「Saw,Sawing(切っている鋸)」がある=相場郁朗撮影

 来場者が足早に行き交う「東京ビッグサイト」の西展示棟1階。屋外へ出ると、目の前の人工池の水面が風に揺れてきらめいた。近づくと、4個の自然石に囲まれ、厚さ12センチの鉄板が沈んでいる。日仏を拠点に活動する韓国出身の現代美術家、李禹煥(82)によるオブジェだ。

 設置されたのは、1995年。李は、アートワーク選定委員会が選んだ、国内外で活躍するアーティスト6人のうちの1人だった。1960年代後半~70年代前半の日本に現れた「もの派」を代表する作家でもある。同派は、石や鉄などをほぼ未加工で提示し、物質と空間の関係を問う美術動向で、本作も「大きな石がテーブルを囲んで、対話するような光景」を表現している。委員の1人、世田谷美術館の酒井忠康館長(77)は、「石という自然物に、人工の鉄をはさむと、人間が石と話すきっかけが生まれる。太古から地球にある石との対話を、鑑賞者に提案しているんです」と語る。

 静かにたたずむ作品に多くの人は気づかないが、周りのベンチには人が集まる。新しい商品を探しに静岡県から来た柴田剛さん(42)は、「川が好き。水が揺れて落ち着きます」と話す。にぎやかな屋内から離れ、一時身を休める空間。人々は作品を通じて広がる自然に癒やされ、また会場へ戻っていった。

(上江洲仁美)

 東京ビッグサイト

 総展示面積約9万5千平方メートルの展示場や会議場などがあり、見本市や国際会議、イベントが行える国内最大のコンベンション施設。「水の都市」をイメージして設計され、晴海の国際見本市会場に代わる施設として、1996年に開業した。来場者に親しまれる環境にするため、国内外の作家らによって制作された8点のアートワークが設置されている。

 《アクセス》ゆりかもめ国際展示場正門駅から徒歩3分。


ぶらり発見

アルポルト

 東京ビッグサイト会議棟8階のイタリアンレストラン、アルポルト(TEL03・5530・1221)は、西麻布の人気イタリア料理店を営む片岡護シェフがプロデュース。旬の食材を使ったパスタランチ(1990円)や、ディナーコース(写真、3990円~、要予約、別途サービス料)が人気だ。

 東京ビッグサイトから徒歩17分の森ビル デジタルアートミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス(TEL6406・3949)では、CGを駆使した「体験型アート」を楽しめる。3200円、中学生以下1000円。

(2018年11月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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