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アートリップ

山形県寒河江(さがえ)市庁舎 
黒川紀章作

光あふれる市民ホール

「生誕」のある市民ホールの床は幾何学模様のタイル張り。家具などは隣の市の「天童木工」製=谷本結利撮影
「生誕」のある市民ホールの床は幾何学模様のタイル張り。家具などは隣の市の「天童木工」製=谷本結利撮影
「生誕」のある市民ホールの床は幾何学模様のタイル張り。家具などは隣の市の「天童木工」製=谷本結利撮影 3階以上が張り出した外観=谷本結利撮影

 四角い箱が宙に浮かんだような建物。山形県寒河江市庁舎は、建築家黒川紀章(1934~2007)が初めて手がけた公共建築だ。50年前の1967年に完成した。

 庁舎は鉄筋コンクリート造りの5階建て。「市民の足元を議会が支え、行政が市民の傘になる」という黒川の考えから、1階に議場、3、4階に執務室がある。2階の市民ホールは4階まで吹き抜けだ。天井窓から優しい光が入る。胎内を表現したというこの空間には、知り合いだった芸術家岡本太郎による、照明を組み込んだ高さ1・7メートルの彫刻「生誕」が輝く。「産みの苦しみとエネルギーを表現した」と岡本の言葉。

 建設40年の2007年にホールを改装。東北芸工大の西沢高男准教授(46)とゼミ生が協力した。「見通しのよさ」が印象的だったと西沢さん。魅力をよみがえらせるため、吹き抜けを囲む窓の前を埋める資料を移動し、木製の記載台などを製作。「生誕」も掃除し、壊れた照明器具を替えた。

 庁舎には建築好きの見学者がよく訪れる。「皆さんが色々教えてくれます」と市総務課の木村孝司さん(43)。勉強の連続といい、他の黒川建築を見に行ったこともある。

 14年、市は8億円以上かけて免震工事をした。今年、国の登録有形文化財に。庁舎はこれからも、市民と時を重ねる。

(小寺美保子)

 寒河江市

 山形県のほぼ中央に位置し、全国有数のサクランボの産地として知られる。収穫期の6月には、「全国さくらんぼの種吹きとばし大会」、休憩所で特産品が味わえる自転車の大会「ツール・ド・さくらんぼ」などが行われる。かつて出羽三山の一角だった葉山がそびえ、市庁舎の大きな窓からも望める。市庁舎の設計は、市内の日東食品製造(現・日東ベスト)の缶詰工場を黒川紀章が手がけた縁で、市長が黒川に依頼したという。

 《アクセス》寒河江駅から徒歩15分。


ぶらり発見

白樺ニマ

 寒河江駅から徒歩3分のGEA(TEL0237・86・7730)は、寒河江市のニット会社佐藤繊維が手がける、石蔵を利用したセレクトショップ。自社製品や国内外のブランド、雑貨が並び、地元食材を使ったレストランも。午前11時~午後7時。(火)休み。

 同市はサクランボの菓子も豊富。サエグサファクトリー(TEL85・7393)の「プチジェリチェリー」(写真、8粒入り、1296円)は、蜜で煮たサクランボをゼリーで包んだ。凍らせても。道の駅などで販売。

(2017年12月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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