都心のオフィス街にできた、ガラスの積み木細工のような建物。年齢もさまざまな人が出入りするここは何?
1910年設立の中央区立京橋図書館は、戦災を免れ戦前の貴重な資料も多く所蔵する。2022年末、郷土資料館も併設する複合施設「本の森ちゅうおう」に移転し、新たなスタートを切った。
東側が大通りに面した建物は間口が狭く奥が深い。以前は都の施設があったこの場所は江戸時代には「八町堀」と呼ばれ、隅田川まで通じる水路だった。
東西に長い敷地の上、北側には暗渠が埋設され、重量をかけられない。プロポーザルで設計者に選ばれた類設計室の佐藤賢志さん(59)は「建物は南側に寄せて細長く。1フロアを大きくとるのは難しい、という厳しい条件だった」と話す。
区側との意見交換などを経て決めたコンセプトは「森」。「森には多様性や多層性、相互作用などがある。今回の建築条件と密接に関係しそうだし、東京のど真ん中に『森』ができたら意味があると直感した」
地面からの高さによって林床、低木層、林冠など様相が変わる森の階層構造に倣い、フロアごとに天井高や明るさ、色彩や照明を変化させている。蔵書約40万冊の図書館は2~5階に分かれているため、各フロアの特徴がわかりやすいように工夫している。
天井をはう線状の照明が描く多角形は、平面を一定の規則で分割した「ボロノイ図」を表現している。細胞や葉脈、キリンの柄など自然界のデザインにも似たランダムな図形は眺めても楽しい。
マンション開発が進み人口が増え続ける中央区。図書館利用者は移転前の2倍以上になり、テラス席や芝生の屋上もある「森」には小さな子ども連れの姿も多い。「初めて図書館に来たという人も多く、好評です」と五所和弘館長(66)は話す。
(片山知愛、写真も)
DATA 設計:類設計室 《最寄り駅》 八丁堀 |
1階入り口横のカフェ「ampere(アンペア)本の森ちゅうおう」(☎03・6228・3511)は自家製サンドイッチとコーヒーが楽しめる。「モーニングプレート」(650円、プラス300円でドリンク付き)や「コールドサンドイッチ」(各種650円~)など。(前)9時~(後)8時((日)(祝)は5時まで、ラストオーダーは1時間前)。第3(木)休み。