みそっぽくないのがミソ? 大手みそメーカーの工場隣に立つ白い塊の正体は……。
みそ作り体験の施設といえば、郷愁を誘う和風建築をイメージしないだろうか。創業100年を記念して造られたハナマルキみそ作り体験館は、そんな先入観を裏切る、オブジェのようなデザインだ。
「100周年に過去を振り返るのではなくて、次の100年へ向けた節目にしたいと考えました」とハナマルキ取締役で体験館建設に携わった平田伸行さんは話す。
古き良き伝統を守ることより、攻めの姿勢を表現したい。そんな思いは、現場から望む南アルプスの山々の岩をイメージした形になった。
「岩のように見せるためにいろいろな要素をそぎ落としました」。設計を担当した竹中工務店の花岡郁哉さんは話す。雨のことを考えれば屋根や雨どいを付けたくなるが、「そういうのが少しでも出てくると、建築っぽくなっちゃう」。考えたあげく、コンクリート板の端をわずかに立ち上げて適切な位置に排水させた。
伊那の澄んだ空気が印象的だったと話す花岡さん。風景に溶け込む、美しい線と地肌の表現にもこだわった。館内のコンクリートには半透明の白い塗装を薄く施し、「岩に雪がうっすら積もったぐらいの雰囲気」に。照明は壁がきれいに光る位置をコンピューターでシミュレーションして決めた。「いろんな努力の結果、その痕跡も残さないシンプルな仕上がりになりました」
窓いっぱいに南アルプスが広がる体験室でのみそ作り。材料をこねる作業は一苦労だが、「そんな時は、景色を眺めてくださいね。力をくれますよ」と地元出身スタッフの小林佳奈美さん。発酵室で熟成させ約3カ月後に届くみその味は格別だという。
(三品智子、写真も)
DATA 設計:竹中工務店 《最寄り駅》 伊那市 |
車で約5分のはびろ農業公園みはらしファーム(お問い合わせは0265・74・1807)は果物などの収穫体験やそば打ちなどができ、直売所、入浴施設、宿泊施設、レストランなどがそろう。7月から8月はブルーベリーやスイートコーンが収穫期。施設や体験内容により受付時間、料金が異なる。