住宅街の角地に立つ、デコボコした建物。アパートだというが、中も相当変わっているらしい……。
単身・カップル向け賃貸アパートといえば、同じ規格のベランダや窓が等間隔に並ぶ。が、さいたま市浦和区で米穀店を営む本田勝博さん(66)が経営する7戸の賃貸住宅「Corner Grain」はベランダの方向も窓の大きさや位置もまちまち。
「賃貸住宅は商品だからね。よそと同じじゃ面白くない」と本田さん。東日本大震災後のアパート建て替えにあたって、若いカップルが住みたくなるような部屋がいいと、入居者層に近い年代の設計者を探し、エウレカの佐野哲史(さとし)さん(41)に依頼した。
入居者が決まりにくい1階は駐車場に、など本田さんの希望を聞いて4案ほど考えた中から、模型を見た本田さんが即決したのが立体パズルのようなこの構造だ。
1階に1戸、1~2階に1戸、2階が2戸、3階に3戸。それぞれ間取りの違う1K~1LDKの住戸にはロフトあり、スキップフロアあり。外部と直接つながる外階段なども全戸にある。思わぬ場所に窓があったり、ベランダ越しに別の住戸の外階段が見えたり、遊び心がくすぐられる。
「鉄骨工事が複雑で、『できない』と断った業者さんもいました」と話す佐野さんだが、自身も苦労した。道路に面した側の高さをざっくり削る「道路斜線制限」を避けるため、地面から空を見通せる「天空率」を計算。どこをどうすれば制限内に収まるか、10センチ単位で調整を繰り返した。
デザインが好きだという本田さんが「造る過程を見られて楽しかった」と言えば、佐野さんも「本田さんは面白いからこれ、って選んでくれる人なので」と話す。完成後には自ら1戸を賃借し、約4年間事務所に使った。
20~30代の入居希望者が多く、狙い通りになったのは驚くほどだったという。「この部屋が空いたら教えて、という問い合わせもありますよ」と本田さんは満足げだ。
(吉﨑未希、写真も)
DATA 設計:Eureka+MARU。architecture 《最寄り》 浦和 |
徒歩約15分のさいたま市青少年宇宙科学館(問い合わせは048・881・1515)は、自然科学に関する展示やイベント、プラネタリウム上映を行う。3月21日までの「『スケルと、ん⁉』~魅せる骨たちの透明標本展」では生物の骨格を染色した標本を展示。午前9時~午後5時。無料(プラネタリウム520円、高校生以下200円)。[月]([祝]の場合は翌平日)休み。