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建モノがたり

アストラムライン新白島駅(広島市中区)

道路の真ん中 優しく乗客覆う

JRとの連絡通路側(北)から。アストラムラインは新白島駅の北側で地下から高架に出る
JRとの連絡通路側(北)から。アストラムラインは新白島駅の北側で地下から高架に出る
JRとの連絡通路側(北)から。アストラムラインは新白島駅の北側で地下から高架に出る 地下ホームは天井の円窓とガラス張りの南側面からの光で明るい

幹線道路の中央分離帯に現れた白いナマコ? タコの足? このデザインになったわけは?

 広島市北西部を走るアストラムラインとJR山陽線の乗換駅として新設された新白島駅。ホームは地下にあり、JRの駅とは地上の通路で連絡している。

 建設地は、片側3車線の国道54号の中央分離帯だ。昼夜問わず交通量が多い幹線道路から「柔らかく守られながら、外部と分断されない建物」を考えた、と設計を担当した赤松佳珠子さんは話す。

 ホームに降りると、明るさに驚く。吹き抜けのドーム形天井に開いた直径1メートル前後の窓と、ガラス張りの側面から光が入り、外の様子がうかがえる。改札口のある1階コンコースに上がれば空はさらに近く、自然に出入り口や連絡通路へ導かれていく。

 ラッパのように一方が広がった半円筒の「シェル」は鋼材製。当初コンクリート製も検討されていたが、土木・建築設計を手がけたパシフィックコンサルタンツの岸尚志さんは劣化や振動による剥離落下などのリスクがなく、設計のイメージを忠実に再現しやすい鋼材を選んだ。

 鋼材の厚さは9ミリと薄いが、ワッフル型のような格子状の突起で強度を確保、梁や柱がないシェル構造の開放的な空間を実現した。

 アニメ「風の谷のナウシカ」の巨大生物「オーム」に似ているといわれたり、足を連想させる「タコ」と呼ばれたり。共同設計者で2016年に亡くなった建築家・横浜国大教授の小嶋一浩さんも足しげく現場に通った。「親しまれて、小嶋も喜んでいると思います」と赤松さんは話す。

(鈴木麻純、写真も)

 DATA

  設計:シーラカンスアンドアソシエイツ(小嶋一浩、赤松佳珠子)、パシフィックコンサルタンツ
  階数:地下1階、地上1階
  用途:駅舎、連絡通路
  完成:2015年


建モノがたり

 徒歩15分の洋菓子工房プランタン(問い合わせは082・228・0817)の一番人気はチーズケーキ(ピース356円、ホール1490円~)。名物の真っ白なモンブラン(464円)のファンも多い。午前9時~午後7時。原則(水)休み。

(2021年12月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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