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建モノがたり

すばる保育園(福岡県小郡市)

二つの園庭 S字型でつくる

0~2歳児の保育室と園庭。地中熱利用換気システムを採用した建物でもあり、福岡県美しいまちづくり建築賞大賞ほか受賞
0~2歳児の保育室と園庭。地中熱利用換気システムを採用した建物でもあり、福岡県美しいまちづくり建築賞大賞ほか受賞
0~2歳児の保育室と園庭。地中熱利用換気システムを採用した建物でもあり、福岡県美しいまちづくり建築賞大賞ほか受賞 ホール部分だけがふくらんだ屋根の形が、山並みと呼応する

福岡空港から車で約30分の田園地帯。遠くから見ても特徴的な、ドームのある薄いピンクの屋根は何?

 周辺を田畑が取り囲み、神社の森に隣接するすばる保育園。甲斐田和子園長は理事長の夫と共に市内の別の場所で約20年、保育園を運営してきた。熊本地震後、自然に恵まれた土地に天災に強い園舎を新築することに決めた。

 新園舎でまず考えたのは年齢により園庭を分けること。「0~2歳児と3歳以上の子どもでは体力や運動量が違います。発達に応じて、どの子も安心して遊べるようにしたかった」と甲斐田さん。

 保育室と一体になった二つの園庭を設け、全体は見渡せるように。この希望を受けて建築家の藤村龍至さん(東京芸大准教授)らが設計したのはSの字のかたちをした園舎。カーブに囲まれた二つの空間が園庭だ。

 0~2歳児の園庭は芝生、3歳児以上は土。どちらも緩く湾曲した保育室と大きな面で接し、室内からは開放感、庭では安心感が感じられる。

 外から見ると、水平な平屋の屋根が1カ所だけふくらんでいる。S字のカーブの途中にあるステージつきのホールで、天井の高さが約6メートル。音楽演奏や屋内の運動に使う。

 甲斐田さんは当初、もっと賑やかな建物をイメージしていた。「色もかわいいディズニーランドみたいなのがいいかなと」。ところが藤村さんの提案は「できるだけ静かなかたち」。1カ所だけふくらんだホールの屋根は、北東に望む地域のシンボル花立山と相似形になり、周囲の風景を印象づける建築となった。

(隈部恵、写真も)

 DATA

  設計:藤村龍至/RFA+林田俊二/CFA
  階数:地上1階
  用途:保育所
  完成:2018年

 《最寄り駅》 大保


建モノがたり

 市内の洋菓子店レーブ・ド・ベベ(問い合わせは0942・75・2020)は季節に合わせた菓子を60種以上扱う。ホールの「ベイクドチーズケーキ」や冬限定の「チョコレートケーキ」(共に1800円)が人気。カフェでは景色を楽しみながらコーヒー(336円)や紅茶(387円)を。店舗午前9時半~午後6時、無休。

すばる保育園
http://www.subaru-hoikuen.com/

建築家藤村龍至主宰のRFA
http://ryujifujimura.jp/

レーブ・ド・ベベ オフィシャルInstagram
https://www.instagram.com/revedebebe1987/

(2021年12月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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