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建モノがたり

京都経済センター(京都市下京区)

祇園祭のため 広々バルコニー

四条通側の入り口。障子の桟のように見えるのは、地元産の木材を使ったルーバー
四条通側の入り口。障子の桟のように見えるのは、地元産の木材を使ったルーバー
四条通側の入り口。障子の桟のように見えるのは、地元産の木材を使ったルーバー 2階のオープンバルコニー。山鉾巡行は昨年に続き中止となったが、函谷鉾と鶏鉾が見られる位置にある。現在は一般の立ち入りを制限している=大成建設提供

阪急烏丸駅直結の新しいビル。けれど、どこかレトロな雰囲気も感じるのはなぜ?

 四条通に面したビジネス中心地。京都経済センターは、京都商工会議所など分散していた六つの主な経済団体などを集約、産業振興や中小企業支援の拠点として新築された。

 設計した大成建設の西崎暢仁さん(41)らが一番実現させたかったのが、2階部分をぐるりと取り囲むオープンバルコニーだ。建設地は祇園祭の山鉾(やまほこ)2基を眺めることができる場所にある。千年続く風景に調和する外観、ふさわしい機能は何か。鉾を水平の視線で見られる、広々としたバルコニーがその答えだった。

 柱や軒は鉾に合わせて落ち着いた色合いに。手すりのデザインは清水寺の舞台をイメージし、欄干の太さを測りに行った。身を乗り出しても安定するよう、断面がレモン形の形状にした。表面は夏場の熱さを軽減するため、縮み織りのようなザラザラとした質感の「ちぢみ粉体塗装」で仕上げた。

 京都は日本でも有数の景観保護先進地域。バルコニー設置にも厳しいルールがある。1年がかりの行政との調整は「苦労も多かった」と西崎さんは振り返るが、京都市で初めての「街に開かれたオープンバルコニー」と自負する。

 バルコニーは外壁のラインから深く後退させてある。1階の四条通側入り口も凹形に引っ込んで訪れた人やバス待ちの人がたたずむスペースがある。「寺社や町屋に見られる建築の作法『抉(えぐ)り』『掘り』『退(ひ)け』を採り入れています」

 起業支援・人材育成拠点の3階フロアは、京都の裏路地「トオリニワ」をコンセプトにした。両側に並ぶ支援団体のオフィスと廊下の間はガラス壁。廊下は誰でも自由に使える「カフェ」とつながり、「お互い気配を感じるが、気にはならない」空間になっている。


(高田倫子、写真上も)

 DATA

  設計:大成建設
  階数:地下2階、地上7階、塔屋1階
  用途:事務所、展示場、劇場、店舗
  完成:2019年

 《最寄り駅》 烏丸、四条


建モノがたり

 地下1階から2階の「SUINA室町」には、飲食店やポケモンセンターキョウトなどが入店。1階中央に位置する大垣書店京都本店は、京都に関わる本を多くそろえる。[前]10時~[後]8時、電話075・746・2211。

(2021年8月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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