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建モノがたり

金沢海みらい図書館(金沢市)

居心地よい光 6千個の窓から

円窓からの外光と書架の上部につけた蛍光灯で、採光のほとんどを賄う。建物を支える構造は壁に埋め込み、開放感のある空間に
円窓からの外光と書架の上部につけた蛍光灯で、採光のほとんどを賄う。建物を支える構造は壁に埋め込み、開放感のある空間に
円窓からの外光と書架の上部につけた蛍光灯で、採光のほとんどを賄う。建物を支える構造は壁に埋め込み、開放感のある空間に 円窓の直径は20~30センチ、ガラスは8種類を場所によって使い分ける

幹線道路沿いに、水玉柄のケーキの箱のような建物が。壁にたくさん穴があいているのはなぜ?

 「弁当忘れても、傘忘れるな」と言うほど降水量が多く、日照が少ない金沢。工場跡地に建てる図書館の「光をどうするか」が一番の課題だったと設計者の堀場弘さん(60)と工藤和美さん(61)は口をそろえる。

 縦横45メートル、天井高12メートル。長い冬も快適に過ごせる広々とした空間を、柔らかく均等に照らすには……。天窓では光が多すぎ、夏は暑い。壁一面ガラス張りもちょっと違う。「小さいものの集合体のほうが落ち着くのでは」と、壁面に多くの開口部を、均等に配置することにした。

 円窓の大きさは3種類。ホールを貸し切り、実物大模型で入る光の量を検証した。さらに建物の10分の1模型を現地に設置。読書の邪魔になりかねない「水玉柄」が、ほとんどの場所で室内に映り込まないことも確認した。西日の当たる時間だけ水玉が現れる場所の窓はガラスの種類を変えるというきめ細かさだ。

 約6千個の窓のアルミ枠をよく見ると、室内側が広がったラッパ型にカーブしている。「単純に穴を開けただけだと、明るい窓と暗い壁のコントラストが強すぎる。カーブさせると光が壁をなめるように広がると気づきました」

 空調設備を地下に設置し、暖房は足元から。窓の開閉ができないため、屋上に換気装置を設けた。館内の空気を約30分で入れ替えることが可能という。

 「目に見えるデザインが仕事だけれど、居心地のよさは見えないところの比重が大きい」と堀場さん。光や空気の質にこだわった「ケーキの箱」は数々の賞を受け、海外でも注目されている。


(鈴木麻純、写真も)

 DATA

  設計:シーラカンスK&H(堀場弘、工藤和美)
  階数:地下1階、地上3階
  用途:図書館、集会所
  完成:2011年

 《最寄り駅》 金沢


建モノがたり

 バスで約5分の石川県銭屋五兵衛記念館(問い合わせは076・267・7744)は北前船の交易で財をなした豪商に関する資料などを展示。銭屋の本宅の一部を移築した「銭五の館」を併設。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。500円。5月~11月は無休、12月~4月は(火)休み。

(2021年6月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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