東京の東部、「江東デルタ」北端の隅田川沿いに18棟が連なる。高さは40メートル、全長1.2キロにも及ぶ。都営住宅など約1900戸のほか、店舗や保育園なども入居する。
周辺はかつて木造家屋や工場が密集していた地域。地震などが発生した際の火災の延焼を危惧した都が、川沿いの広域避難場所を守る「防火壁」の機能を持たせるため建設した。
隣接する棟は連結され、ふだんは地上に通路が開いているが、非常時には鋼鉄の扉が閉まる。東に面した住戸のバルコニーには防火シャッターが備え付けてある。外壁に全体で計40基ほど設置された「放水銃」(現在は休止)が、一層要塞(ようさい)らしさを醸し出す。
「赴任したばかりの頃は、設備や構造を把握するだけでもひと苦労でした」と、管理する都住宅供給公社の林豊雄(たかお)所長(56)。地下には非常用飲料水を約3千トン貯水し、1週間分の電力をまかなう非常用発電設備も。3カ所の監視室は24時間体制だ。
住人の防災意識も高い。年に1度の避難訓練は、炊き出しや消火栓の操作体験などを盛り込んだ大掛かりなもの。1千人近くが参加する年もあるという。長年団地に暮らし、向島地域の消防団分団長も務める本田滝男さん(67)は「この団地に暮らすからこそ、建物の設備や、防災のことを学んできました。いざという時には地域の力になりたい」と話す。
幸いこれまで一度も防火壁が稼働する災害は発生していない。元自治会連合会長の花田邦夫さん(82)は「住む人の顔ぶれは移り変わっていくが、防災を通じて生まれたコミュニティーを、次の世代にもつなぎたい」と語る。
(渡辺鮎美、写真も)
DATA 設計:日建設計、日本設計、都市計画同人 《最寄り駅》 鐘ケ淵、東向島 |
徒歩10分弱の吉備子屋(問い合わせは03・3614・5371)は、きび団子専門店。直径1センチほどの団子が串に4個刺さっている。店先で食べる場合は、湯通ししたての熱々にきなこをたっぷりまぶして。1人前5本、270円。午前11時~午後5時。原則(月)休み。