白いレース模様の壁に三角屋根。東京ミッドタウンそばにある、絵本から抜け出してきたような家は何?
オブジェのような白い家は、メルセデス・ベンツ日本と竹中工務店が「モビリティとリビングの未来」をテーマに生み出した体験施設。電動化、自動化が進んだ自動車を組み込んだ近未来の生活を提案する。
正面の入り口は、そのまま車の進入路になっている。電気自動車が屋内の生活空間の一部に置かれ、リビングに溶け込んでいる。
平屋88平方メートルの家の「頭脳」といえるのが、ほぼ中央にある約2・5メートル四方の透明なパネル。手をかざすと車のバッテリーや室内状況のデータが表示される。手の動きや音声を使って室温や照明の色や明るさの調節ができ、繰り返せばAI(人工知能)が住人の好みを学習する。
最先端技術を集めた空間だが、設計した竹中工務店の花岡郁哉さんは「原始時代の人々が住まいに求めただろう木漏れ日と洞窟を意識してデザインした」と話す。実際に中に入った瞬間に感じるのは、光の粒が降り注ぐような心地よい明るさだ。
その秘密はレースのように見えた外装にあった。使われているのは、様々なパターンに切り抜かれた金属パネルが約1200枚。365日24時間の日射をコンピューターでシミュレーションして各パネルの形と配置を決定した。年間を通して適度な光が差し、木漏れ日に包まれているように感じるという。
「人を見守り、ともに成長する建築は住宅に限らず病院、学校、店舗などにも展開できる」。花岡さんらは「未来」を近くに見ているようだ。
(隈部恵、建物外観の写真も)
DATA 設計:竹中工務店 《最寄り駅》 乃木坂 |
隣接するメルセデス・ベンツのブランド発信拠点「メルセデス ミー 東京」の一角には立ち食いそば店の Minatoya 3(問い合わせは03・3478・8381)がある。西新橋にあった有名店創業者が監修し、肉そば(1千円)を提供。午前11時半~午後6時。