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建モノがたり

静岡新聞・静岡放送東京支社(東京都中央区)

銀座の大木 半世紀経て健在

建物の足元には池があり、金魚が泳いでいた。地震対策のため、基礎部分は地下24メートルまで達する
建物の足元には池があり、金魚が泳いでいた。地震対策のため、基礎部分は地下24メートルまで達する
建物の足元には池があり、金魚が泳いでいた。地震対策のため、基礎部分は地下24メートルまで達する 直径7・71メートルの円筒部分は階段とエレベーターホールに=いずれも工藤隆太郎撮影

銀座の大通りを見下ろす1本の大樹。この発想はどこから? 内部はどうなっているの?

 1本の円柱の左右にいくつかの箱が張り出す。東京高速道路と外堀通りにはさまれた角地にあるこのビルは、ダークブラウンの色のせいもあって、木のイメージが強い。

 日本を代表する建築家・丹下健三さん(1913~2005)が設計、「メタボリズム」建築の代表例の一つともいわれる。「メタボリズム」は戦後の高度成長を背景に、人口増や社会の変化に合わせて「新陳代謝」する都市や建築を提唱した若手建築家らの運動だ。建築当初は同様のビルを次々と建て、連結していく構想も描かれていたという。

 187平方メートルの敷地に立つ建物は、高さ57メートルの「流動空間」=幹と横方向にのびる「目的空間」=枝から成り立つ。幹部分にはらせん状の階段やトイレ、エレベーターなどの設備を集中させ、人や情報、エネルギーが垂直方向に移動する場とした。

 幹から延びる鉄骨に支えられたオフィス空間は宙に浮いていて、ビルが密集する周辺の景観の中で風通しの良さと軽快さを感じさせる。こぢんまりした室内は、南東側と北西側の2面全体が縦約2・5メートルのガラスで覆われている。一日中たっぷり光が差し込み、まるで半屋外にいるような開放感がある。

 完成から50年以上が経過した今年、内装や設備の更新のため2度目の改修作業が始まった。「1960年代を象徴する建物が今日まで継承されていることに大きな価値がある」と丹下都市建築設計会長で健三さんの息子・丹下憲孝さん。さらに成長した大樹に出合えるのは1年後だ。


(陣代雅子)

 DATA

  設計:丹下健三/丹下健三+都市・建築設計研究所
  階数:地下1階、地上12階
  用途:オフィス
  完成:1967年

 《最寄り駅》 新橋


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 歩いて1分、新橋駅と有楽町駅間のJR高架下は、飲食店街URACORI(銀座裏コリドー)となっている。昭和レトロな雰囲気が漂う居酒屋、銭湯をテーマにしたバー、各地の郷土料理が味わえる飲食店など全部で11店舗が並ぶ。問い合わせは東京交通興業(03・3591・0868)。

(2021年5月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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