温室を思わせるガラス張りの建物の中には、古民家と蔵。過去へタイムスリップしたようなこれは何?
約250人の子どもたちが通う松崎幼稚園は、1918年開園。1万人以上に及ぶ卒園生には、小説家の高樹のぶ子さんも名を連ねる。園と同じぐらい歴史のある隣接の古民家と、築約160年の蔵を取得。100周年を機に「あそびの家」(ランチルーム兼遊戯室)に再生することにした。
設計者の青木茂さん(72)は、古い建物をよみがえらせることで知られた存在だ。既存建物の骨格や個性を生かしながら耐震性能を向上させ、新たな機能や価値を与える「リファイニング建築」を35年前から提唱し、ここ25年で完成させた。
格天井のある古民家の茶の間と蔵を残しつつ、一度に約60人の子どもが昼食をとれる空間を。園側のこうした希望をかなえるには、壁や筋交いを追加して耐震補強する通常の方法では難しい。屋根瓦やふき土、不要な土壁や仕上げ材を取り除き、建物の軽量化を図った。
こうして母屋の約半分は、はりや柱など木造の骨組みだけに。接続する蔵と併せ鉄骨造りの「カバー」で丸ごと覆い、「あそびの家」に生まれ変わった。園庭側と向かいの歩道側をガラス張りにしたのは、「近隣の方に園内の様子を見て欲しかったし、園の広さをアピールしたかったから」と青木さんはいう。
園は認定こども園として保育園の役割も担うため、「あそびの家」では夕方まで約80人の子どもたちが過ごす。一部が畳敷き、年季の入った木の柱が点々と並ぶ広間と、図書室になった蔵。6代目園長の脇幸典さん(44)は、「体を動かしたり、蔵に隠れたり、家庭的な雰囲気でリラックスして過ごせるようです」と話した。
(高田倫子、写真も)
DATA 設計:青木茂建築工房 《最寄り駅》 防府 |
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