ビル街に突如現れる黄色の壁。色といい、ところどころ開いた穴といい、これはやっぱり……?
東京のど真ん中に立つビルは、1階から3階が保育園、4階が学童クラブと、一棟まるごと子育て関連の施設だ。
「子どもたちの創造性に訴えかける、心が躍る保育園にしたかったんです」と、設計者の大成建設・野口鮎子さん(35)は話す。建物のテーマは「チーズ」。大小のビルが周囲をとり囲む中、子どもも覚えやすいデザインを検討するうちに、台形の土地の形からの連想でたどり着いた。
チーズらしさを損なわないよう、大小の円窓が浮かんで見える正面の壁は、柱を壁と一体とすることで柱が見えないよう工夫されている。強度をもたせる耐震壁は正面から見えない反対側に設けた。屋上は園庭。風や視線よけのため高く囲った壁が、まるで帽子のようだ。
円窓は大きいもので直径2・2メートル。出窓になっていて登って遊べるものもある。西本恵理香園長(56)は、「窓にもたれたり外の電車や走る車を見たり、子どもたちは円窓が大好きです」と話す。
建物の特徴を表現する絵本も作った。チーズが好きなペンギンが大きなチーズを見つけてすみ始める……というストーリーをデザイン会社と協業で作成、園児に読み聞かせを行っている。
内部の階段の壁も穴が開いている。階数を示す数字もチーズのデザイン。「細かい造作を仕掛けると、子どもたちが敏感に反応し使いこなしてくれる。それが子どもの施設を設計するうえでのやりがいです」。そう話す野口さんの表情が、子どものように輝いた。
(高田倫子)
DATA 設計:大成建設株式会社 階数:地上4階 《最寄り駅》 神田 |
徒歩15分ほどの神保町シアター(問い合わせは03・5281・5132)は、昭和30年代の日本映画を中心とした作品をフィルム上映している。29日(金)までアラカンこと嵐寛寿郎出演作品を特集。1300円(当日券のみ)。