うねうねと、まるでイルカが波に乗って泳いでいるみたい。どうしてこんな屋根にしたの?
おだやかな波を思わせる曲線に、海風を受けた白波のような窓。
設計者の大西康隆さん(39)は、シンボリックな屋根が海から目印となるのはもちろん、反対側の山の中腹の広場から見た時に「何だろう?」と思わせる狙いがあったという。「誰よりもヨット利用者たちが、地域の人や観光客にも開かれた場となることを望んでいました」
2千平方メートルを超えるコンクリート製の一体成形屋根は厚さが30センチある。内部の鉄筋を塩害から守るためだ。軽量化のため、型枠内にバレーボール大の発泡樹脂系の球体を並べてコンクリート量を減らした。耐震性は周囲約33メートルの直方体の支えを2カ所設置して確保している。
大西さんは「自然と共生する建物」とも表現する。中に入ると、全面ガラス張りの壁面と、屋根に設けた七つの窓から自然光が降り注ぎ、昼間は照明がいらないほど。屋根を軽くしたため視界を遮る柱が少なくなり、屋内にいても海や山の気配を常に感じることができる。
共同設計者の故・西田勝彦さんは江の島にヨットを持つヨットマンだった。2階のテラスを帆が手入れできる広さにしたのは西田さんのアイデアだ。来夏の東京五輪ではセーリング競技の拠点となる。息子の司(おさむ)さん(44)は、「子どもたちの記憶にオリンピックの光景が残り、ヨットに興味を持ってもらえたら」と期待を寄せる。
(斉藤由夏、写真も)
DATA 設計:ヘルム+オンデザインパートナーズ 階数:地上2階 《最寄り駅》 片瀬江ノ島 |
併設するcafeとびっちょ(問い合わせは0466・53・7760)では、釜揚げしらす丼(1078円)ほかカレーやパスタ、ピザなどを提供。午前8時~午後6時。(火)休み。29日は営業。