おなかをせり出したような姿。一見しただけでは高さも階数も分からない。この形にしたのはなぜ? 何階建てなの?
高層ビルが立ち並ぶ青山通りから1本入った通りは、閑静な低層の住宅街。東京によくある風景だ。
建築家の永山祐子さん(44)は、そのギャップに着目した。「商業地域なのか住居地域なのか、はっきりしない都市のはざまに、どちらのスケールにも属さないあいまいな建物を建てる。おもしろいと思いましたね」
土地の条件から、道路の日照や通風に支障がない高さの建物にしなければならない。そこで、ファサード(正面)の中央を張り出し、弧を描く曲線をつくった。実際の高さは約18メートルだが、地上から見上げると建物の稜線が見えず、どこまでも上に続いているような感覚にとらわれる。
一見すると何階建てか分からない不思議さは、ランダムに配置されたスリットのような窓の効果でもある。10~70センチ幅の窓は1層につき2段。曲線に合わせ、層ごとに異なるサイズの窓枠をコンクリートで成形。硬化を待って2週間おきに重ね合わせていく。細心の注意が必要な、難度の高い作業だったという。
建物前の道路は幅4メートルほどだが、ファサードの形のためにスペースが大きく感じられる。上階層には上向きに角度がついた窓から、都会では貴重な日光が差し込み、時間帯で変わるグラデーションをつくる。
「ほかとは違ったつくりで、人の意識が自然と向くような建物をつくりたい」。永山さんの思いはこれからも形になっていく。
(陣代雅子)
DATA 設計:永山祐子/永山祐子建築設計 《最寄り駅》 表参道 |
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