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建モノがたり

松原市民松原図書館(大阪府松原市)

壁厚さ600ミリ 池の中の「本の森」

ため池の周辺は田井城今池親水公園として人々の憩いの場となっている
ため池の周辺は田井城今池親水公園として人々の憩いの場となっている
ため池の周辺は田井城今池親水公園として人々の憩いの場となっている 1階の窓に面した閲覧席は水面に近く、水の気配を身近に感じられる

ため池につかったような建物。実はこれ、図書館なのです。でも紙は湿気に弱いのでは?

 大阪府松原市には古墳やため池が多い。痕跡も含め古墳は約20基、ため池は約40カ所を数える。

 1月に移転リニューアルした松原市民松原図書館は、そんなため池の中にある。

 市は埋め立てを前提に設計施工案を公募したが、建築設計事務所マル・アーキテクチャは池をいかす設計を提案。事務所主宰の高野洋平さん(41)と森田祥子さん(37)が、町の特徴を後世まで残し伝えたいと考えたからだ。埋め立てないことで工期短縮、コスト削減もできた。

 外壁のコンクリートの厚さは600ミリ。通常の3倍ほどで、建築というより土木構造物の風情。

 表面もあえて粗く仕上げ、「自然と一体化している古墳のように、長い時間を経たような姿にしたかった」と話す。

 本に大敵の湿気が多いのではと思うが、「湿度はそんなに高くありません」と高野さん。

 館内の空気は、吹き抜けを通りらせん状に循環する自然換気と空調で管理され、外壁の厚さで外気の影響を受けにくいという。

 開口部は少ないが、閲覧席には大小の窓から光が届き、時間帯や天候により水面の揺らぎが壁や天井に映し出される。

 少しずつずらして配置された1階の書架を、森田さんは「思いがけない本に出会える、本の森」と表現する。

 勉強中の高校3年生、柚木優人さんと梶原駿輔さんは「気分転換できる場所も多く、休みの日は昼から夜までいられる」と、テラスでつかの間、休憩していた。

(小森風美、写真も)

 DATA

  設計:MARU。 architecture+鴻池組
  階数:地上3階、地下1階、塔屋1階
  用途:図書館
  完成:2019年11月

 《最寄り駅》 高見ノ里


建モノがたり

 図書館から東に400メートルのグレインキッチン(問い合わせは072・333・5559)は、肉のうまみが凝縮された「粗挽(あらび)きジューシーハンバーグ」(ランチ899円、ディナー1080円)が人気。午前11時~午後3時、5時半~9時。(火)はランチタイムのみ。(日)(祝)休み。

(2020年10月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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