郊外の丘陵地にどっしりとした存在感。シャープな輪郭の形が何かに似ている気もする、あれは何?
神奈川県との境に近い田園地帯、街道に面した正面は、どっしり重厚ながら優雅でもある。音響機器メーカー、オーディオテクニカの本社と聞けば、スピーカーのようにも見えてくる。
半世紀以上本拠とする地での建て替え計画は、都心の営業拠点や福井の製造工場、中国工場建設にもかかわった早稲田大の赤坂喜顕教授が担当した。「当社の歴史、製品、ブランドイメージなどすべてをご理解いただいています」と、社内プロジェクトメンバーでもあった社長秘書の櫻井恵美さんは話す。計画には、「感性でものづくりをする会社らしく、感性が豊かになるような建物にしたい」と考える経営陣の意向も反映されたという。
正面から見て手前が高く、奥へと屋根に傾斜がついた本館棟は、営業・管理部門が入る手前側と、研究・開発部門の奥側に分かれる。二つをつなぐスロープには中庭からの自然光が注ぐ。「新しい発想やアイデアが浮かんでくる」ことを狙った空間だ。
本館棟の横に立つ食堂棟も片流れの屋根。ただし本館棟とは逆向きの勾配で、側面からは寄り添う親子の白鯨のようだ。
10以上のプランから、周囲の環境との調和が決め手で決定したデザインだが、よい意味で目を引く結果になった。「路線バスに乗った時など、『こんなのあったんだ』『きれいになったね』というお声が聞こえます」。櫻井さんは誇らしげに話した。
(隈部恵)
DATA 設計:早稲田大学赤坂喜顕研究室+竹中工務店 《最寄り駅》 成瀬 |
成瀬駅南口徒歩6分のてんぷら加藤(問い合わせは042・706・3533)は、昼はかき揚げ天丼(1320円)、夜は鴨川コース(6050円)で、さっぱりとした天ぷらが楽しめる。午前11時半~午後2時、5時~10時(入店は8時半まで)。(水)、第1・3(火)休み。