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建モノがたり

オーディオテクニカ本社(東京都町田市)

正面はスピーカー 横からは・・・

横から見ると、白鯨の親子(手前が子)のよう。2019年には、優秀な建築物の建築主、設計者、施工者を表彰するBCS賞を受けた=郭允撮影
横から見ると、白鯨の親子(手前が子)のよう。2019年には、優秀な建築物の建築主、設計者、施工者を表彰するBCS賞を受けた=郭允撮影
横から見ると、白鯨の親子(手前が子)のよう。2019年には、優秀な建築物の建築主、設計者、施工者を表彰するBCS賞を受けた=郭允撮影 街道側から見た本館棟の正面=郭允撮影

郊外の丘陵地にどっしりとした存在感。シャープな輪郭の形が何かに似ている気もする、あれは何?

 神奈川県との境に近い田園地帯、街道に面した正面は、どっしり重厚ながら優雅でもある。音響機器メーカー、オーディオテクニカの本社と聞けば、スピーカーのようにも見えてくる。

 半世紀以上本拠とする地での建て替え計画は、都心の営業拠点や福井の製造工場、中国工場建設にもかかわった早稲田大の赤坂喜顕教授が担当した。「当社の歴史、製品、ブランドイメージなどすべてをご理解いただいています」と、社内プロジェクトメンバーでもあった社長秘書の櫻井恵美さんは話す。計画には、「感性でものづくりをする会社らしく、感性が豊かになるような建物にしたい」と考える経営陣の意向も反映されたという。

 正面から見て手前が高く、奥へと屋根に傾斜がついた本館棟は、営業・管理部門が入る手前側と、研究・開発部門の奥側に分かれる。二つをつなぐスロープには中庭からの自然光が注ぐ。「新しい発想やアイデアが浮かんでくる」ことを狙った空間だ。

 本館棟の横に立つ食堂棟も片流れの屋根。ただし本館棟とは逆向きの勾配で、側面からは寄り添う親子の白鯨のようだ。

 10以上のプランから、周囲の環境との調和が決め手で決定したデザインだが、よい意味で目を引く結果になった。「路線バスに乗った時など、『こんなのあったんだ』『きれいになったね』というお声が聞こえます」。櫻井さんは誇らしげに話した。

(隈部恵)

 DATA

  設計:早稲田大学赤坂喜顕研究室+竹中工務店
  階数:地上5階
  用途:事務所、研究所
  完成:2016年1月

 《最寄り駅》 成瀬


建モノがたり

 成瀬駅南口徒歩6分のてんぷら加藤(問い合わせは042・706・3533)は、昼はかき揚げ天丼(1320円)、夜は鴨川コース(6050円)で、さっぱりとした天ぷらが楽しめる。午前11時半~午後2時、5時~10時(入店は8時半まで)。(水)、第1・3(火)休み。

(2020年7月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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