巻き貝のような、一息にむいたリンゴの皮のような……。十二角形の建物の中は、一体どうなっているの?
洗練されたイメージの街、代官山。T字路交差点に面して高い木々に囲まれて立つのは、雑貨メーカー「スーパープランニング」の自社ビルだ。誰もが気軽に立ち寄れる場所にしたいという依頼を受けた建築家の中村拓志さん(46)は、様々な人が顔を合わせる公園のような場所を目指した。
内部は全体が大きならせん階段のよう。半地下のギャラリーから上っていくとカフェ、自社商品の販売スペース、そしてオフィスへと続く。ゆったりした階段の一段一段がフロアでもあり、同じ空間にいても、目線の高さの違う人がいるのが不思議だ。
階ごとに用途が区切られていない利点は、カフェなどを訪れる客と、仕事をするデザイナーらがお互いの気配を感じられることだという。「今の社会は生産と消費がはっきり分離されているが、僕らの生活は本来なだらかにつながっている」と中村さん。同社会長の神谷敬久さん(69)も「商品の市場に近い場所ではアイデアも生まれやすい」と話す。ギャラリーでは展覧会や様々なイベントが行われ、インスピレーションを得る場にもなっている。
ビルが建つ以前から事務所や店を構える代官山に思い入れがあるという神谷さん。ぐるりと巡らせた窓からは、刻々と変化する太陽の動きや、街の様子を眺められる。「働くみんなの顔が見え、言葉を交わしながら階段を上がっていけるのも気に入っています」
(伊藤めぐみ)
DATA 設計:中村拓志 & NAP建築設計事務所 《最寄り駅》 代官山 |
歩いて10分の場所にあるのが渋谷区ふれあい植物センター(問い合わせは03・5468・1384)。温室では熱帯植物約200種が展示され、南アフリカ原産のプロテアの花が見頃。午前10時~午後6時(入園は30分前まで)。(月)(祝・休の場合は翌平日)休み。入園料100円。