駅前で光を反射する、巨大な「キューブ」。ガラスで覆われた交番のデザインに込められた思いとは?
バスロータリーに囲まれた駅前広場。ぽっかりと、ガラスのキューブ型パズルが浮かんでいるようだ。
1980~90年代、都内には建築家らが設計したデザイン性の高い交番が20以上登場した。そのひとつで、手がけたのは藤木隆男さん(73)だ。「広場のオブジェになるデザインを考えた。光ることで『保安』の意味も持たせた」と振り返る。
上部は2種類を組み合わせたガラス。日中は樹影が映り込む。夜は街の明かりを受け、障子越しのように半透明になるなど、昼夜様々な表情を見せる。
警察官が勤務する1階の事務室は、透明なガラス張りだ。「視界が開け、街の様子がよくわかって助かります」と巡査部長の秀島類さん(42)。自転車を置いている入り口横のスペースでは、信号待ちの人がよく雨宿りするという。「人が立ち寄りやすいよう広くひさしをとった」という藤木さんの狙い通りだ。
「広場の雰囲気に溶け込んでるのに、遠くからも見つけやすい。巡回から帰って、見ると安心します」と若手巡査の立川綾乃さん(20)。朝の外観も印象的だと2人の警察官が声をそろえる。東向きのため正面から日を受けて輝くという。「意図していない思わぬシーンが生まれるのが自然光の魅力。私たち建築家が頼りにしているところです」と藤木さんは話した。
(井上優子)
DATA 設計:藤木隆男建築研究所 《最寄り駅》 篠崎 |
交番から徒歩15分の篠原風鈴本舗(問い合わせは03・3670・2512)はガラス製の「江戸風鈴」を手作りする。もとは魔よけや厄よけの意味があったとされる風鈴。現在、店舗は休業中だが、オンラインショップや電話注文で購入できる。(日)(祝)休み。