ふじのくに茶の都ミュージアム
稜線が白く浮き上がる富士山の手前に、緑の3本線で茶畑を表現した。数本の線を組にした「吹き寄せ」の縦じまは、小堀遠州が提唱した「綺麗さび」を意識。
環境史って何? 伝える手がかりは
全国で唯一「環境史」をうたい、2016年に開館したふじのくに地球環境史ミュージアム。開館2年前、研究員公募に応じて東京から転職した岸本年郎さんらのチームは、早速難題に直面した。
静岡初の県立博物館とはいえ目玉になる展示物はなく、大型予算がつくわけでもない。廃校後の高校を利用した展示で、見る人に何を伝えるのか。話し合った末に残ったのが「百年後の静岡が豊かであるために」という言葉だ。「100年後、自分はもう生きていない世界を考える長期的な視点を持ちたいということ」と岸本さんは話す。
シンボルマークはこの言葉から、数字の100をかたどった。同時に陸と海を表す黒と青の鏡映しの「m」でもあり、富士山の標高や駿河湾の水深を示すメートルに通じる。もちろんmuseumの頭文字でもある。二つの円が作る「∞」(無限大)には持続可能な社会への願いを込めた。
「百年後……」を共通理念にすえた展示は10の部屋ごとに海、大地、生物多様性などをテーマにする。来館者に考えさせるねらいの展示デザインは国内外で高く評価され、10以上の賞を受けた。
◆ふじのくに地球環境史ミュージアム 静岡市駿河区大谷5762(問い合わせは054・260・7111)。午前10時~午後5時半(入館は30分前まで)。(月)[(祝)の場合は翌平日]休み。