読んでたのしい、当たってうれしい。

街の十八番

竹清堂@下高井戸

竹工芸の老舗に花も彩り

店に隣接する工房で作業する茂樹さん(左)と旭祥さん。棚に並ぶ瓶は竹ひごを染めるあかねやすおうなど草木染の材料
店に隣接する工房で作業する茂樹さん(左)と旭祥さん。棚に並ぶ瓶は竹ひごを染めるあかねやすおうなど草木染の材料
店に隣接する工房で作業する茂樹さん(左)と旭祥さん。棚に並ぶ瓶は竹ひごを染めるあかねやすおうなど草木染の材料 旭祥さんの作品「千筋組花籠 風紋」

 1907年の創業以来、竹工芸品の制作、販売を続ける。大正時代、青梅街道や甲州街道沿いには、農家や市場で使う籠などを売る竹細工の店が数多くあったという。

 九州や京都から仕入れたさらし竹から、作る物に合わせて材料となる竹ひごを取る。細いもので、厚さ0・2ミリ、幅0・3ミリ程。「一人前にひご取りできるまでに10年ほどかかります」と4代目の田中茂樹さん(38)。染色などの加工を施した後、手作業で編んでいく。完成まで、直径30センチ程の花籠で5日間、バッグは持ち手の取り付けなども含め1週間ほどだ。

 昨年改装した店内には、籠やカトラリーなどの日用品と共に、3代目の旭祥(きょくしょう)さん(70)の伝統工芸作品が並ぶ。2008年には紫綬褒章を受章、海外で個展も開く。「アートとして評価して頂けるのはうれしいこと」と旭祥さん。

 花の仕事をしていた茂樹さんの妻亜希子さんが加わり、花の販売も始めた。季節の花が来店者の心を和ませている。茂樹さんは「なんでもできるのがうちのよさ。時代にあわせて変化し続けています」

(文・写真 秦れんな)


 ◆東京都杉並区下高井戸3の1の2(TEL03・3304・3710)。午前9時~午後7時。(水)休み。真竹箸1620円、本煤竹菓子切り1500円など。

(2018年5月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

街の十八番の新着記事

  • 水戸元祖 天狗納豆@水戸 茨城といえば納豆というイメージをつくったのが水戸の「天狗(てんぐ)納豆」。

  • 大和屋@日本橋 東京・日本橋、三越前に店を構えるかつお節専門店。江戸末期、新潟出身の初代が、魚河岸のあった日本橋で商いを始めた。

  • 佐野造船所@東京・潮見 水都・江戸で物流を担ったのは木造船だった。かつて、和船をつくっていた船大工は今はほとんど姿を消した。佐野造船所は、船大工の職人技を代々受け継ぎながら生き延びてきた。

  • 天真正伝香取神道流本部道場@千葉・香取 「エイ」「ヤー!」。勇ましいかけ声と木刀の打ち合う音が響く。千葉県香取市、香取神宮のほど近く。約600年連綿と伝えられてきた古武術、天真正伝(しょうでん)香取神道流の本部道場だ。

新着コラム