『タクシー運転手 約束は海を越えて』の「チュモッパッ」 日本でよく食べられているおにぎりは韓国にもあって、「拳のような形をしたご飯」という意味で、「チュモッパッ」と呼ばれています。
日本で中華料理が親しまれているように、韓国にも「韓国式中華料理」が根付いています。その代表格といえるのが、ジャージャン麺。真っ黒なソースと麺をぐるぐるかき混ぜながら食べる様子は韓国映画やドラマにも度々登場し、気になっていた人も多いのでは? 映画「スタートアップ!」(2020年公開、チェ・ジョンヨル監督・脚本)の舞台となる中華料理店「チャンプン飯店」は、おかっぱ頭の料理人が手がけるジャージャン麺が看板メニュー。主人公の家出青年・テギルが、ただならぬオーラを放ちながらジャージャン麺を作る料理人・コソクと出会い、成長していきます。
第3回 『スタートアップ!』の「ジャージャン麺」
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勉強も、学校も、家も嫌いで、母親に反抗ばかりしている18歳の青年・テギル。親友のサンピルが「早くお金を稼ぎたい」と社会に飛び込んでいったのを機に、テギルも家を飛び出し、当てもなく町をさまよいます。「ジャージャン麺3000ウォン(約300円)」の文字に釣られて入った「チャンプン飯店」で、「配達員募集」の貼り紙を見付け、住み込みで働くことに。そこで出会ったのが、なぜかおかっぱ頭をした強面(こわもて)の料理人・コソクをはじめ、個性豊かな同僚たち。最初はぶつかり合いながらも、次第にテギルは社会の厳しさや働く楽しさを学び、大人になっていきます。
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「チャンプン飯店」の看板メニューであるジャージャン麺は、19世紀後半に中国山東省から仁川(インチョン)に渡ってきた華僑たちによって紹介されたのが始まりだとされています。中国味噌をアレンジした「チュンジャン」と呼ばれる黒味噌でタマネギやジャガイモ、ニンジンなどを炒め、水溶き片栗粉でとろみをつけた真っ黒なソースが特徴。日本で食べられている「ジャージャー麺」よりも甘辛く香ばしい味で、リーズナブルな価格もあって、幅広い世代に愛されてきました。
(イメージ画像)
ジャージャン麺を語る上で欠かせないのが韓国の「ペダル(配達)文化」です。最近は日本でもフードデリバリーが浸透してきましたが、韓国ではずっと以前から食事を「ペダル」してもらって、食べる文化が生活に根付いていて、その王道メニューがジャージャン麺。2017年に飲食宅配代行サービス大手「ウーバーイーツ」が韓国に上陸した際、競争が激しく不採算が続いたため、わずか2年で撤退してしまったほどです。
さらに、電話やアプリで注文すれば、24時間365日、コーヒー1杯から配達してくれるだけでなく、公園や道端、河川敷など、どんなところにも届けてくれるというのがまた驚き。映画の中でも、テギルがジャージャン麺1皿の注文を受け、屋外の広場まで配達するシーンが登場します。
ちなみに、おかっぱ頭の料理人を演じるのは、人気俳優のマ・ドンソク。筋肉ムキムキの体と険しい顔で、悪役を演じることの多い彼ですが、時折見せるコミカルな演技と見た目のギャップが多くの人の心をつかみ、韓国では「マブリー(マ・ドンソク+ラブリー)」という愛称で親しまれています。この映画でもおかっぱ頭で、人気アイドル「TWICE」の楽曲を歌って踊るなど、マブリーの魅力が存分に詰まっています。
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最近では、日本でも韓国式中華料理を提供するお店が増えてきました。ジャージャン麺はもちろん、韓国では定番の「タンスユク(酢豚)」や「チャンポン」もおすすめ。日本で食べられている酢豚やちゃんぽんとはまた違った魅力のある料理なので、日本と韓国、それぞれの国で親しまれている中華料理を食べ比べてみるのも楽しいかもしれません。
【作品情報】
「スタートアップ!」
製作年 2019年
製作国 韓国
監督・脚本 チェ・ジョンヨル
出演 マ・ドンソク、パク・ジョンミン、チョン・ヘイン、ヨム・ジョンアほか
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発売元 クロックワークス
販売元 ハピネット・メディアマーケティング
価格 4290円(DVD)、5280円(Blu-ray) ※DVD&Blu-ray発売中