「アフター・ヤン」(2021年) 「テクノ」と呼ばれる人型ロボットのヤン、中国系の養女・ミカ、養父母が暮らす近未来が舞台です。
料理上手な弁護士のシロさんと、心優しい美容師のケンジ。一緒に暮らす2人の何げない日常を描いた物語です。ただ単にほっこりするだけじゃなく世間体や家族のことで考えさせられるシーンもあるけれど、ささやかな幸せって日々の中にたくさんあるんやなって、見るたびに感じます。
シロさんが作る料理はどれもおいしそうで、それをケンジが「おいし~い」って喜んで食べる。そんな2人の食卓のシーンが一番好きです。マスキングテープで表現したリンゴのトーストもケンジの大好物。私も「暮らしの中で見つけた小さな幸せ」を作品にしているので、そういうところを感じてこの物語に引かれるんだと思います。
どの登場人物も個性的で素敵ですが、言葉とかが響くのはケンジやなって。一緒にいると「まあいっか」って流してしまいそうなことも、ちゃんとシロさんと向き合って伝えている。買い物仲間の佳代子さんに孫が生まれたときも、「誰かのうれしいことってのは、やっぱうれしいじゃない」って素直に喜んでた。シロさんと2人でも十分幸せだけど、「2人だけで生きているわけじゃないから、シロさんはこれまで以上にお父さん、お母さんと仲良くしてね」ってところも、本当に優しいなって思いました。
夫の帰りが遅いとき、1人でごはんを食べながら見ることもあります。家族や大切な人との関係性について、「分かるなあ」って自分と置き換えて見てしまいますね。夫にちょっと言い過ぎてしまった時、私もケンジのようにちゃんと気持ちを伝えたいなって思います。
(聞き手・片山知愛)
監 督=中江和仁
脚 本=安達奈緒子
原 作=よしながふみ 出 演=西島秀俊、内野聖陽、山本耕史、磯村勇斗、田中美佐子ほか たむら・みき
大阪府出身。2010年からマスキングテープを使ったちぎり絵制作を開始。広告や雑誌、企業とのコラボレーショングッズなどを手がける。 |