つめをぬるひとさん(爪作家)
「アフター・ヤン」(2021年) 「テクノ」と呼ばれる人型ロボットのヤン、中国系の養女・ミカ、養父母が暮らす近未来が舞台です。
「アフター・ヤン」(2021年) 「テクノ」と呼ばれる人型ロボットのヤン、中国系の養女・ミカ、養父母が暮らす近未来が舞台です。
アカデミー賞候補などと何かと話題をさらっていたので気になり、動画サイトで見たのがきっかけです。
生活が苦しく、半地下住宅に身を寄せ合うキム一家と、高級住宅街に居を構え、若くしてIT企業の社長を務めるパク一家が、ひょんなことから交わり、ついには双方の家庭が崩壊する。コメディーやサスペンスを交えながら、現代の格差社会に疑問を投げかける作品になっています。
イタズラまがいな仕掛けで次々とパク一家から家庭教師や運転手などの職を得ていくキム一家。コミカルに描く前半から一転し、後半は重ねたウソがほころびを見せる展開になります。映画をとおしてキム一家の振るまいに、サイズの合わない靴をはいているような違和感を覚え、この絵のイメージが浮かびました。
裕福な家庭からくすねて得た偽りの豊かさの象徴として、鮮やかな黄色と柄物のマスキングテープで温かそうな毛糸の靴下を描きました。靴下を編む毛糸は、和紙が素材のマスキングテープを細長くちぎってつなげています。ちぎることで独特の毛羽が立ち、毛糸の風合いになります。
透けるマスキングテープを重ね、油絵の具を重ねたようなつややかな表現も可能になります。毛糸を握る手だけでも6種、背景を合わせて全体で約15種を使いました。
かすめとって編んでも、同じ形にはならず、端からほころんでいく。格差にあらがい、もがいた人の先にある違和感を表現してみました。
(聞き手・鈴木麻純)
監督・共同脚本=ポン・ジュノ
製作国=韓国
出 演=ソン・ガンホ、チェ・ウシク、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョンほか ふなはら・なさ
武蔵野美大在学中にマスキングテープで作品表現を始める。オリジナルのほか、「モナリザ」「最後の晩餐」などの名画の再現も |