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私の描くグッとムービー

松本若菜さん(俳優)
「アップタウン・ガールズ」(2003年)

女の友情 薄くないよ!

「アップタウン・ガールズ」(2003年)
「アップタウン・ガールズ」(2003年)

 地元の鳥取は映画館が少なかったので、レンタルビデオ店で映画を借りて、姉と一緒に気に入った作品を何回も見るのが習慣でした。そのうちの一本です。

 主人公のモリーは幼いころに両親を亡くし、莫大な遺産がありますが、ある日突然無一文になり、レイという女の子のシッターをすることになります。22歳のモリーの心はずっと子供のまま。逆に8歳のレイはとっても大人なんです。ちぐはぐな関係性で、かみ合わない会話をしていた2人の心がちょっとずつ通い始めていく。でも、そのたびに何かが起きて、また離れて。近づいて離れて近づいて。そんなお話です。

 ビデオのパッケージがポップな感じで可愛いから、いわゆるシンデレラストーリーなのかなと思って見たら、逆シンデレラっていうんでしょうか。夢のような生活が、どんどん現実的になり、モリーは、甘えていた自分の過去と向き合い、徐々に変わっていきます。レイはとっても生意気だけど、一生懸命自分の気持ちを押しころしていて、モリーがそれを少しずつ解き放ってあげるんです。終盤になるほど、気持ちを掛け合う場面があって、一緒に見ていた姉と「泣けたね」って。

 この映画を見ると、地元の親友たちの顔が思い浮かびます。モリーとレイの友情は一生消えないだろうし、私もそう思える人たちに出会えていることが幸せだなと思います。よく「女性同士の友情は薄いよね」って言われませんか? 「そんなことないよ!」。そう返したいですね。

(聞き手・宮嶋麻里子)

 

 監督=ボアズ・イェーキン
   製作=米
   出演=ブリタニー・マーフィ、ダコタ・ファニングほか
まつもと・わかな
 1984年生まれ。22歳で上京しデビュー。近作に連ドラ初主演の「復讐の未亡人」、「金魚妻」、「やんごとなき一族」など。
(2022年4月15日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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