「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
アメリカの音楽シーンに革命を起こしたパンクバンド「ディセンデンツ」のドキュメンタリーです。1978年に米・カリフォルニアのあか抜けない少年たちが組んだバンドは、商業主義に陥ることなく独自の存在感を保ちながら、今も活動を続けています。元メンバーやスタッフの話のほか、数々の有名ミュージシャンが、いかに彼らに影響を受けたかを、熱っぽく証言しています。
この映画を見返すたび、自分の志に対して信念を曲げずに生きることの意味と、人との縁のありがたさを確認してきました。彼らの生き様を通し、一度の人生、ハードワークに臨もうと決めました。ファッション重視のバンドが多いなか、普段着でライブを行っていたのは、音楽に対する愚直さの表れです。科学者としても活躍するボーカルのマイロは、学業や研究に専念するために何度もバンドを離れますが、必ず戻ってきます。グループの要のドラマー、ビルの2度の大病後はマイロが中心となり彼をサポートしました。ビルの「生きてるって最高!」は印象的な言葉です。
バンドのメンバーの姿は、私が90年代後半に米・フィラデルフィアで過ごした大学時代の仲間と重なります。絵を描き始めた当初から私の絵を面白がってくれ、卒業後に帰国して「版権エージェント」の職に就きながら行ってきた画家活動を応援し続けてくれています。2014年の日本公開時、渋谷の映画館で一緒に見たのも彼らですし、そういえば、学生時代、皆が集まるアパートメントの壁には「ディセンデンツ」のポスターが貼ってありました。
(聞き手・隈部恵)
監督=マット・リグル、ディードル・ラクーア
製作=米
出演=ビル・スティーブンソン、マイロ・オーカーマンほか たうち・まりお
1973年埼玉県生まれ。著書に「心を揺さぶる曼陀羅ぬりえ」(猿江商會)、訳書に「なぜ働くのか」(朝日出版社/TEDブックス)。 |