秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
幼なじみの高校生の少女2人と、先輩との三角関係を、おとぎ話のようなユーモアを交えて描いた作品です。なかでも、映像と音楽の美しさが印象に残っています。
中学校の時の塾の先生が岩井俊二監督の大ファンだった影響で、同監督の作品を見るようになりました。この映画の公開当時は、私も登場人物と同じ高校生で、学校が終わってから友人と2人で映画館へ見に行きました。帰り道では、見たばかりの映画の内容をまねして、舞う桜の花びらをつかんで遊んだのを覚えています。多感な時期だったので、映画の内容に憧れのような感情を抱いていたのでしょうね。イラストも、この桜の場面をイメージして描きました。
この映画で一番気に入っているのは、冒頭、制服姿の少女たちが、ただ歩いている場面。2人で一緒に白い息を吐く、そんなささいな日常を切り取っただけなのですが、美しい浮遊感のある映像で叙情的に表現されているせいか、キラキラして見えるんです。桜の場面と同じく、学生時代にしか味わえない空気感のようなものを感じて、昔を思い出して懐かしく、それと同時に少し恥ずかしい気持ちになります。
私は、例えるなら雨が降る前の空気の匂いや、揺らぎみたいなものをテーマにイラストを描いているのですが、自分でも気づかないうちに岩井俊二監督の映像や、光と影の使い方、色調などから影響を受けていたことに気づかされました。中でもこの映画は、一番心に残っている大好きな作品です。
(聞き手・高田倫子)
プロデューサー・監督・脚本・音楽=岩井俊二
出演=鈴木杏、蒼井優、郭智博、相田翔子、阿部寛、平泉成ほか
うしくぼ・まさみ
1987年、東京生まれ。日常をテーマにアンニュイな女性を描く。近著に「三十路女は分が悪い」(中央公論新社)の装画など。 |