「五感で楽しめる」県立美術館 2015年4月24日(金)、「日本一のおんせん県」を名乗る九州・大分に大分県立美術館(OPAM)が開館します。長崎県美術館(2005年)、青森県立美術館(2006年)以来、9年ぶりに新設される県立美術館です。
周囲を自然豊かな木々に囲まれたポーラ美術館。東京から1時間半の富士箱根伊豆国立公園内に静かにたたずむ美しいガラスで覆われた美術館内には、自然光がふんだんに差し込み、内外を断絶することなく、箱根の自然の心地よさを感じ取れます。
館内には大小五つの展示室やミュージアムショップ、テラス付のレストランやカフェといった美術館に欠かせない施設を備えています。所蔵作品の質の高さについては改めてここで言及するまでもありません。
そんなポーラ美術館に「6番目の展示室」があることをご存じでしょうか。美術館の周りに広がる自然林の中に設置された670メートルの遊歩道こそが、その6番目の展示室に他なりません。
ブナやヒメシャラの大木が林立する「森の遊歩道」は、鳥たちのさえずりや時折見せる小動物と共に風や清流の音が遊びたわむれ、人が本来持っている安らぎを呼び覚ましてくれます。世界広しといえども、これだけ自然環境に恵まれた美術館も珍しいのではないでしょうか。
ポーラ美術館の建つこのエリアは、人為的な影響を受けておらず、自然をありのまま感じられるのです。「森の遊歩道」は、ユーカリの木で作られた枕木状の板が遊歩道に敷き詰められています。強度もあり、何よりも周りの自然環境を壊さぬ配慮から丁寧に、そして安全に歩けるよう敷かれています。程よい硬さがあり、とても歩きやすいのが特徴です。ヒメシャラ、ブナ、ミズキ、ヤマボウシ、アセビなどの生い茂る原生林の中を歩いているだけで、気分は晴れやかなものになります。
散策所要時間は30~40分ほどです。清流の流れが聞こえてきたらゴールは間近です。富士箱根伊豆国立公園内の自然を思う存分満喫できる6番目の展示室。印象派の画家が好んだ木漏れ日や光の移り変わりを楽しみつつ森林浴が楽しめる都会の美術館では決して味わえない贅沢な場所なのです。
世界的にも珍しい6700点の化粧道具コレクションを所蔵しているのも、化粧品会社のオーナーがそのコレクションを築いたポーラ美術館ならではです。ヨーロッパを中心にアフリカ、オセアニアそして日本。古代から現代まで美へのあくなき追求は時代も国をも超越した普遍的な命題です。贅を極めた王侯貴族の化粧道具よりも、江戸時代の庶民が使っていたものに愛着を感じてしまいます。また、ポーラ美術館の顔ともいうべきピエール・オーギュスト・ルノワール「レースの帽子の少女」の頬の赤みや口紅にはどのような化粧道具が使われていたのか想像してみるとまた絵画の違った側面が見えてくるはずです。 |
ポーラ美術館
〒250-0631
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
年中無休(ただし展示替のための臨時休館あり)
電話:0460-84-2111(代表)
URL:http://www.polamuseum.or.jp/
【筆者プロフィール】
中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/