「五感で楽しめる」県立美術館 2015年4月24日(金)、「日本一のおんせん県」を名乗る九州・大分に大分県立美術館(OPAM)が開館します。長崎県美術館(2005年)、青森県立美術館(2006年)以来、9年ぶりに新設される県立美術館です。
世界25カ国190余の美術館が所蔵する1000点を超える世界の名画や、古代壁画を大塚オーミ陶業の特殊技術によってオリジナル作品と同じサイズ・色合いで、原寸大の陶板で忠実に再現し展示公開している大塚国際美術館。鳴門の渦潮を臨む緑豊かな瀬戸内海国立公園内に建つ壮大な規模の美術館です。
鑑賞ルートは何と約4キロメートルにも及び、古代から現代絵画まで西洋美術の変遷を教科書などで目にしたことのある世界中の名画により、日本に居ながらにしてたどることが出来る、世界でも類を見ない美術館です。レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」の修復前と後を比較して見られるなど、場所だけでなく時空を超えた美術鑑賞が大塚国際美術館では可能です。
中でも出色なのが「環境展示」と呼ばれている展示方法です。ポンペイの古代遺跡やカッパドキアの聖テオドール聖堂壁画、オランジュリー美術館のモネの「大睡蓮」など、移動不可能な美術作品を現地の空間をそのまま再現し立体展示を行っています。
例えば、イタリアのパドヴァにあるスクロヴェーニ礼拝堂。ジョットによって描かれた西洋美術史において重要な作品である一連のフレスコ絵画が堂内壁面にびっしりと描かれた礼拝堂を現地で鑑賞するには事前予約が必要です。チケットを握りしめ決められた日時に行ったとしても鑑賞時間はわずか15分しか許されません。正直それではキリストやマリアの生涯を描いたフレスコ画をほとんど観ることが出来ません。しかし、大塚国際美術館なら思う存分その空間に身を置いておけるのです。同様にミケランジェロが描いた天井画と正面祭壇壁画「最後の審判」とともに立体再現した「システィーナ・ホール」では用意された椅子に腰かけ思う存分に現地の空間と同じ気分を味わえます。
実際に伺うまでははっきり言って複製への期待は高くはありませんでした。しかし、スクロヴェーニ礼拝堂やシスティーナ礼拝堂の環境展示に身を投じるやいなや、それは雲散霧消し、目の前にある圧倒的な臨場感をたたえる空間に心を奪われてしまいました。オーバーでも何でもなく一生に一度は足を運ぶ価値のある美術館です。
「名画を複製する」と言っても現地の美術館にある状態と同じものを目指しているところに大塚国際美術館のこだわりや、使命感が見て取れます。例えばどんな作品でも額縁に収まっていますが、その額縁までも忠実に再現しているのです。祭壇画の場合も同じです。エル・グレコが祭壇画として描いたものの現在は各地へ散逸してしまっているものを復元展示も行っています。高さ12メートル以上、横幅7.7メートルもある大祭壇画の外枠の部分をイタリアで作ってもらい船で徳島まで運んだという徹底したこだわりがあります。名画だけでなく額縁も要注目です。 |
大塚国際美術館
〒772-0053
徳島県鳴門市鳴門町 鳴門公園内
開館時間:9時30分から17時
(入館は16時まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)/8月無休
連続休館 2015年1月5日~9日
2月は歌舞伎公演による休館あり
電話:088-687-3737
URL:http://www.o-museum.or.jp/
【筆者プロフィール】
中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/