「五感で楽しめる」県立美術館 2015年4月24日(金)、「日本一のおんせん県」を名乗る九州・大分に大分県立美術館(OPAM)が開館します。長崎県美術館(2005年)、青森県立美術館(2006年)以来、9年ぶりに新設される県立美術館です。
日本最古の学校「足利学校」や昨年国宝に指定された「鑁阿寺(ばんなじ)」など歴史と文化の香り漂う街、栃木県足利市の郊外に3万坪にもおよぶ広大な敷地を誇る、世界最大級の陶磁専門の美術館、栗田美術館があります。
世界最大級の敷地面積、所蔵作品数を誇る栗田美術館ですが、焼き物、陶磁器なら何でも扱っているわけではありません。展示は江戸時代肥前鍋島藩で生産された「伊万里焼」と「鍋島焼」だけに限られているストイックさもこの美術館の魅力であり、気概を感じさせます。
かつて、ヨーロッパ諸国はこぞって中国(明)から陶磁器を輸入しましたが、1644年に明王朝が滅亡すると商船の航行が禁止され、中国陶磁の輸出が一時途絶えてしまいました。このため、日本の陶磁器に目が向けられ、オランダ東インド会社から大量の注文が舞い込みました。こうして「伊万里焼」がヨーロッパの地へ大量に輸出されるようになり、伊万里全盛期を迎えます。ヨーロッパ人の好みや用途に合わせ大型の「伊万里焼」が大量に輸出用として生産されました。栗田美術館にある大きな焼き物もそうした歴史の名残を今に伝えるものです。
もうひとつの目玉である「鍋島焼」は江戸幕府への献上品として伊万里の藩窯で焼かれたものを指します。日本国内向けの「鍋島焼」とヨーロッパ向けの「伊万里焼」との同じ九州で焼かれたものでもその違いは歴然です。栗田美術館では、両者を見比べながら鑑賞出来ます。どちらが好みに合うか、また自宅で使うならどれが良いかなど自由な視点で楽しんでみましょう。
とはいえ、共に何百万、何千万円単位となんでも鑑定団でも驚くほど高額な評価が付き、しばしばお茶の間を驚かせるのが「伊万里」「鍋島」です。本館、歴史館、陶磁会館、資料館が山中に点在しているスケールの大きな美術館です。それぞれにこれでもか~と名品が展示されています。それこそ“目を皿のようにして”楽しんで下さい。一生分の目の保養になります。
栗田美術館とJR両毛線をはさんで向かい側に、あしかがフラワーパークがあります。1,000平方メートルもの大きさを誇る藤棚「大藤」(栃木県天然記念物)があり、年間約100万人以上が訪れる有数の観光地として知られていますが、20年ほど前は渡良瀬川向こうの市街地に隣接した早川農園でした。そこから不可能と言われた藤棚の移植を行い、それがテレビなどでも紹介され一躍注目を浴びることになりました。あしかがフラワーパークとは規模こそ違えど栗田美術館の敷地内にも四季折々の花々が咲き来館者の目を楽しませてくれます。 |
栗田美術館
〒329-4217
栃木県足利市駒場町1542番地
開館時間:9時30分~17時
休館日:月曜日(但、祝日の場合翌日)年末年始、12月28日より1月2日
※休館日及び開館時間は、季節により変更する場合があります。
電話:0284-91-1026
URL:http://www.kurita.or.jp/
【筆者プロフィール】
中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/