「五感で楽しめる」県立美術館 2015年4月24日(金)、「日本一のおんせん県」を名乗る九州・大分に大分県立美術館(OPAM)が開館します。長崎県美術館(2005年)、青森県立美術館(2006年)以来、9年ぶりに新設される県立美術館です。
もし六本木で一時間空き時間が出来てしまったらどうします?蒸し暑くうっとうしい梅雨の時季、どこか冷房の効いた静かな場所でゆったりと時間を有意義に使いたいですよね。私ならそんな時、迷わず国立新美術館へ向かいます。
一時間では、展覧会を観るにはちょっと時間が短過ぎるかと思われるかもしれませんが、目的は1、2階で開催されている展覧会ではありません。多くの来館者で賑わう展示会場を横目で眺めつつ、エレベーターに乗り一気に最上階まで。国立新美術館の3階には講演会を行う講堂の他に、アート・ライブラリーと称された美術に関する専用図書室があります。
ここはいつでも開館時間内(10時~18時)であれば、誰でも自由に使うことが出来ます。美術に関する雑誌や書籍が取りそろえてあるので、アート好きにとってこれ以上時間つぶしに格好の場所はありません。一般的な図書館と違い貸し出しは行っていないので、基本的にいつでも書架にお目当ての本があるのもうれしい点です。同じ趣味を持った人たちに囲まれ、隣接する屋上庭園の風景に時折目をやりつつ、お気入りの一冊と向き合える、とても居心地の良い空間です。
また、国内外で開催された展覧会カタログを所蔵していることが、ここの図書館の大きな特徴のひとつです。その数なんと約80,000冊!1946年以降に刊行された展覧会カタログや近現代美術を中心とする図書・雑誌などを閲覧できます。ちなみに、隣接するアートライブラリー別館閲覧室には、1945年以前に刊行された展覧会カタログや美術関連図書もそろえています(別館の利用方法については、サイトを確認して下さい。 http://www.nact.jp/art-library/annex.html )
所蔵作品を持たない国立新美術館ですが、「人と情報をつなぎ、文化遺産としての資料を収集・公開する美術館」アートセンターとしての役割も担っています。時間が空いた時だけでなく、是非積極的に利用したい施設でもあります。
懐かしい展覧会カタログに見入ってしまうと、一時間なんてあっと言う間です。ちょっと立ち寄ったつもりが、予定の時間をオーバーしないよう、くれぐれも気を付けて下さいね。
故・黒川紀章氏設計の国立新美術館は、波打つガラスのファサードを持ち、建物そのものが一つの芸術作品のように人目を引きつけています。カフェ「カフェ コキーユ」や地下1階のショップに加え、新たに1階にもオープンした「スーベニアフロムトーキョー」を配する1階ロビー。この立体的なガラスカーテンウォールに包まれた吹き抜けの空間や、天井の高い展示室の冷暖房を効率よく行うために、国立新美術館では床に空調の吹き出し口があります。円形の吹き出し口がランダムに配置されています。何度も行き慣れた美術館も視点を少し変えるとまた違って見えてくるものです。 |
国立新美術館
〒106-8558
東京都港区六本木7-22-2
開館時間:10時~18時(入館は17時30分まで)
※会期中の毎週金曜日は20時まで(入館は19時30分まで)
休館日:火曜日
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL:http://www.nact.jp/
【筆者プロフィール】
中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/