「五感で楽しめる」県立美術館 2015年4月24日(金)、「日本一のおんせん県」を名乗る九州・大分に大分県立美術館(OPAM)が開館します。長崎県美術館(2005年)、青森県立美術館(2006年)以来、9年ぶりに新設される県立美術館です。
東京・白金台の閑静な住宅地にひっそりと建つ畠山記念館へ足を運ばれたことはありますか。立派な正門から敷地内へ一歩、足を踏み入れると、樹齢数百年の大木が茂るお庭が目の前に広がります。ここが東京であることを瞬時に忘れさせるような光景です。季節ごとに様々な顔を見せてくれますが、緑に包まれた今の時季が最も美しさを満喫できます。
自然に目をやり、木々の間を爽やかに吹き抜ける風を肌で感じ、鳥のさえずりに耳を傾けながら歩を進めると、次第に畠山記念館本館が見えてきます。その途中には現在でも使用されているお茶室も点在しています。
創設者畠山一清(1881―1971)があえて門から本館の建物が見えないように配置した意図はまさにここにあります。お庭の自然などを楽しみつつ、本館へ。まさにお茶会に招かれた気分です。
今年で創設50周年をむかえる畠山記念館は、創設者の意向で本館の建物時代が「茶室」(日本家屋)に見立てられています。鉄筋コンクリート造りでありながらも、巧みに日本建築の要素を随所に取り入れた独特の建物です。
本館の入口では靴を脱ぎスリッパに履き替えて館内へ入ります。日本家屋に土足のまま上がりこむ人がいないように。これも開館以来貫かれてきたこの美術館ならではの大きな特徴です。外から泥やほこりを持ちこむ心配がないので、保存環境の面では結果的にプラスの効果をもたらしているそうです。
展示室には動線も特に設けられておらず、まさに気の向くまま、足の向くままに作品を堪能できるとても居心地の良い空間です。国宝の「林檎花図」「煙寺晩鐘図」をはじめとする名品からお茶道具の優品の数々が、「濃茶棚」「薄茶棚」「懐石棚」と名付けられた3つの固定ケースに季節に合わせ年4回の展覧会で公開されています。
6月15日までは「畠山記念館名品展」を開催中です。この機会に一度足を運んでみてはいかがでしょうか。ショップでは、パール印刷を施した美しいA5サイズの「茶道具名品」のクリアファイルが一番人気だそうです。
「茶室」に見立て造られた畠山記念館の展示室では、なんと驚くことにお抹茶を飲みながら作品鑑賞も可能です。展示室内で本格的なお茶が飲める美術館は日本広しといえどもここだけではないでしょうか。四畳半の茶室「省庵」と茶庭も設けられています。畳に正座して一服、または作品を観るのに最も良い目線の高さのベンチに腰掛けながら一服。かつて将軍や戦国武将たちが有していた軸や茶道具を見ながらお茶を頂いていると、現代人が失いかけている「場を感じる力」を喚起させてくれます。茶券400円もとってもお得感ありますよね。 |
畠山記念館
〒108-0071
東京都港区白金台2-20-12
開館時間:
春季展・夏季展(4~9月) 10:00 ~ 17:00
秋季展・冬季展(10~3月) 10:00 ~ 16:30
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日・展示替期間・年末年始
電話:03-3447-5787
URL:http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/
【筆者プロフィール】
中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/