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ぶらり、ミュージアム

日本メーカーの情熱で 進化する展示ケース

(サントリー美術館)

保存性、安全性など機能的に高いレベルでありつつ、作品を引き立てる黒子に徹したデザインの展示ケース。サントリー美術館内
保存性、安全性など機能的に高いレベルでありつつ、作品を引き立てる黒子に徹したデザインの展示ケース。サントリー美術館内
保存性、安全性など機能的に高いレベルでありつつ、作品を引き立てる黒子に徹したデザインの展示ケース。サントリー美術館内 サントリー美術館内 11月10日まで開催中の「酒器のある情景」展

 日本のみならず世界の美術館・博物館になくては困る存在でありながら、それがあることにより、時として鑑賞の妨げにもなってしまう、そんなアンビバレンスな存在のものとは何でしょう?つねに展示室ではわき役に徹し、その存在を極力表に出さないように努めているまさに影の立役者。そう、答えは「展示ケース」です。

 展示ケースを意識して展覧会を見ることはありませんが、実は、展示ケースの違いによって作品の見え方、つまり良しあしも変わってくるのです。せっかく好きな作品と感動の対面を果たせても特別な場合を除き、必ず展示ケースが立ちはだかります。

 作品保護の観点から仕方ないことではありますが、出来ることならその存在を感じさせないものに越したことはありません。自分自身の姿が映り込んでしまっては楽しみに見に来た絵の感動も薄れてしまいます。

 しかし、ここ数年で展示ケースは飛躍的な進化を遂げています。展示ケースがあることに気付かず作品に近寄り思わずおでこをガラス面にコツンとぶつけてしまった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

 作品をしっかりとガードしつつ、映り込みのほとんどないクオリティーの高い展示ケースをミュージアムに送り出しているのは、何を隠そう日本の文具メーカー「コクヨ」なのです。美術館とは一見縁もゆかりもなさそうな「コクヨ」が開発した「THEORiA(テオリア)」は日本全国のミュージアムで皆さんの心地よい鑑賞を陰でサポートしています。

 東京・六本木のサントリー美術館で開催中の「Drinking Glass ― 酒器のある情景」展では、古代から現代までのガラス器を紹介しています。ケースが作り出す幻想的な雰囲気に酔いしれながら、人々が愛で伝えてきたドリンキング・グラスの世界が堪能できます。

 元々この分野のパイオニアは、ドイツのGlasbau Hahn(グラスバウハーン)社で、国立博物館をはじめ国内でも多く採用されていますが、日本人の感性によりマッチする繊細な展示ケースをコクヨは作り出し高い支持を得ています。

 映画『風立ちぬ』で飛行機の視察にドイツへ赴いた堀越二郎のように、ミュージアムケースに熱い情熱を抱いた日本人が現代にもいるのです。次回展覧会に行かれる際は展示ケースにも注目してみて下さい。

 コクヨ ミュージアムケース「THEORiA(テオリア)」
 http://www.e-theoria.com/

 GLASBAU HAHN JAPAN(グラスバウハーン)
 http://www.glasbau-hahn.jp/about_glasbau_hann/index.html

 

耳よりばなし

公式アプリにも遊び心

 サントリー美術館は「美を結ぶ。美をひらく。」というアプリがあり、iPhoneで楽しめます。展覧会情報、開館情報、所蔵作品紹介(「絵画」「漆工」「陶磁器」「ガラス」「染織」「装身具」の6つのカテゴリーに分類されています)といった基本的なコンテンツの他に、画面をそっと手で包み込むことで、所蔵作品で彩られた24コマの画面がランダムに変化する素敵な機能が備わっています。このアプリのタイトルにもなっている「美を結ぶ。美をひらく。」をまさに具現化しています。他の美術館アプリにはない、サントリー美術館の名品が織り成す「遊び心」によって、日本美術をより一層身近に体感できるはずです。

 ■サントリー美術館 iPhone公式アプリ「美を結ぶ。美をひらく。」
 https://itunes.apple.com/jp/app/id453157348?mt=8


データ

サントリー美術館

〒107-8643
東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
開館時間:午前10時から午後6時、金曜・土曜は午後8時まで
入館は閉館の30分前まで

休館日:火曜日、展示替え期間、年末年始
ハローダイヤル:(03)3479-8600
URL:http://suntory.jp/SMA/


 【筆者プロフィール】

中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/

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